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動機づけられた推論

🧠 心理学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
動機づけられた推論とは、人が正確な結論よりも自分が望む結論に至ろうとする動機に従って情報を探し、評価し、解釈する傾向を指します。望む結論を支持する証拠はたやすく受け入れ、反対の証拠はより厳しく吟味するという形で現れます。1990年に心理学者ジヴァ・クンダが理論としてまとめ、政治的分極化、科学情報の受容、交渉、自己評価の研究で中心的な概念として用いられています。
目次
  1. 1. クンダの理論と起源
  2. 2. 動機づけられた懐疑と政治
  3. 3. 経済学的解釈と反論
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

クンダの理論と起源

フェスティンガー(1957年)の認知的不協和理論は、人が信念と行動の不一致を減らすために考えを変えることを示し、動機と認知の関係についての研究の土台を築きました。ロード、ロス、レッパー(1979年)は、死刑制度に賛否のはっきりした人々に同じ混合した証拠を見せると、どちらの側も自分の立場を支持する研究をより説得力があると評価し、かえって態度がより極端になる「偏った同化」を報告しました。クンダ(1990年)はこうした研究を総合し、人は正確さへの動機と方向性をもつ動機を併せもち、方向性の動機が望む結論を正当化できる記憶や規則を選択的に引き出させると説明しました。ただし人はどんな結論でも信じるわけではなく、もっともらしい正当化を組み立てられるときにだけ望む結論に至ると強調しています。

動機づけられた懐疑と政治

ディットとロペス(1992年)は、人が望まない結論にはより多くの情報を求め、より厳しい基準を当てはめるという「動機づけられた懐疑」を実験で示しました。テーバーとロッジ(2006年)は、政治的な主張を評価するとき、知識の多い人ほど自分の立場に合う主張をたやすく受け入れ、反対の主張には反論する傾向が強いという結果を報告しました。カハン(2013年)とカハンら(2017年)は、数的能力の高い人でさえ銃規制のような政治的に敏感な問題では自陣営に有利な方向にデータを誤って解釈するという「動機づけられた数的能力」を示し、これを集団のアイデンティティを守ろうとする認知として説明しました。ディットら(2019年)はメタ分析で、リベラルと保守がほぼ同程度の党派的バイアスを示すと報告しています。

経済学的解釈と反論

バブコックとローウェンスタイン(1997年)は、交渉の当事者が何が公正かを自分に有利に解釈する自己奉仕的バイアスのために交渉が決裂しうると分析しました。ベナブーとティロール(2016年)は、信念そのものが効用をもたらす消費財であり、やる気を保つ投資財でもありうるという観点から動機づけられた信念を経済学のモデルで説明し、エプリーとギロビッチ(2016年)はその心理的な仕組みを整理しました。メルシエとスペルベル(2011年)は、推論はもともと真理を探すためよりも他者を説得し論証するために進化したという論証理論を示しました。一方でペニークックとランド(2019年)は、偽ニュースを信じる理由は動機づけられた推論よりも、十分に考えない「怠惰な思考」に近いと反論しました。この概念は確証バイアスや偽情報の研究とともに論じられます。

よくある質問

動機づけられた推論を簡単に言うと?
信じたい結論を先に決めておき、それに合う証拠はたやすく受け入れ、合わない証拠は細かく突っ込む考え方です。政治や応援しているチームについての判断で特によく現れます。
動機づけられた推論と確証バイアスはどう違いますか?
確証バイアスは、既存の信念を確かめる情報を探して覚えておく傾向を広く指します。動機づけられた推論はその背景にある「望む結論に至ろうとする動機」に焦点を当て、証拠を評価する基準そのものが変わる点を強調します。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Festinger, L. (1957). A Theory of Cognitive Dissonance. Stanford: Stanford University Press.
  2. Lord, C. G., Ross, L., & Lepper, M. R. (1979). Biased assimilation and attitude polarization: The effects of prior theories on subsequently considered evidence. Journal of Personality and Social Psychology, 37(11), 2098–2109.
  3. Kunda, Z. (1990). The case for motivated reasoning. Psychological Bulletin, 108(3), 480–498.
  4. Ditto, P. H., & Lopez, D. F. (1992). Motivated skepticism: Use of differential decision criteria for preferred and nonpreferred conclusions. Journal of Personality and Social Psychology, 63(4), 568–584.
  5. Babcock, L., & Loewenstein, G. (1997). Explaining bargaining impasse: The role of self-serving biases. Journal of Economic Perspectives, 11(1), 109–126.
  6. Taber, C. S., & Lodge, M. (2006). Motivated skepticism in the evaluation of political beliefs. American Journal of Political Science, 50(3), 755–769.
  7. Bénabou, R., & Tirole, J. (2016). Mindful economics: The production, consumption, and value of beliefs. Journal of Economic Perspectives, 30(3), 141–164.
  8. Kahan, D. M. (2013). Ideology, motivated reasoning, and cognitive reflection. Judgment and Decision Making, 8(4), 407–424.
  9. Kahan, D. M., Peters, E., Dawson, E. C., & Slovic, P. (2017). Motivated numeracy and enlightened self-government. Behavioural Public Policy, 1(1), 54–86.
  10. Mercier, H., & Sperber, D. (2011). Why do humans reason? Arguments for an argumentative theory. Behavioral and Brain Sciences, 34(2), 57–74.
  11. Pennycook, G., & Rand, D. G. (2019). Lazy, not biased: Susceptibility to partisan fake news is better explained by lack of reasoning than by motivated reasoning. Cognition, 188, 39–50.
  12. Ditto, P. H., et al. (2019). At least bias is bipartisan: A meta-analytic comparison of partisan bias in liberals and conservatives. Perspectives on Psychological Science, 14(2), 273–291.
  13. Epley, N., & Gilovich, T. (2016). The mechanics of motivated reasoning. Journal of Economic Perspectives, 30(3), 133–140.

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。