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新貿易理論

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
新貿易理論は、国家間に技術や要素賦存の違いがなくても、規模の経済と消費者の多様性への選好によって貿易が生じると説明する国際貿易理論です。ポール・クルーグマンが1979〜80年に定式化し、この業績で2008年にノーベル経済学賞を受賞しました。
目次
  1. 1. 伝統的理論の限界
  2. 2. クルーグマン・モデルの核心
  3. 3. 政策的含意とその後の発展
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

伝統的理論の限界

リカードの比較優位論とヘクシャー=オリーン理論は、貿易は国家間の技術や資本・労働の賦存の違いから生じると説明します。これによれば、貿易は異なる国の間で、異なる産業の製品をやり取りする形になるはずです。しかし第二次大戦後、世界貿易のかなりの部分は要素賦存の似た先進国どうしで、しかも自動車と自動車のように同じ産業の中で行われました。グルーベルとロイド(1975年)はこの「産業内貿易」の比重を測る指数を開発し、その規模が大きいことを示しました。資本の豊富な米国がむしろ労働集約的な商品を輸出しているというレオンチェフの逆説(1953年)も伝統的理論に疑問を投げかけました。

クルーグマン・モデルの核心

クルーグマン(1979年、1980年)はディキシットとスティグリッツ(1977年)の独占的競争モデルを国際貿易に応用しました。各企業は固定費用のために生産量が増えるほど平均費用が下がる規模の経済を享受し、消費者は多様な商品を好みます。一国の市場だけでは多くの品種を効率的に生産できませんが、貿易で市場が統合されれば各企業はより大きな規模で生産し、消費者はより多くの品種を享受できます。そのため、まったく同じ2つの国の間でも異なるブランドをやり取りする貿易が利益になります。貿易の利益は価格の低下とともに「多様性の増加」から生まれ、ブローダとワインスタイン(2006年)は米国で輸入品種の増加による厚生効果がGDPの約2.6%に達すると推計しました。また「自国市場効果」によって、需要の大きい国が規模の経済の働く産業の純輸出国になる傾向が説明されます。この理論はヘルプマンとクルーグマン(1985年)で比較優位と統合されました。

政策的含意とその後の発展

規模の経済と不完全競争があれば、政府の介入が自国の利益になる可能性が生じます。ブランダーとスペンサー(1985年)はゲーム理論を用いて、寡占産業では輸出補助金が外国の競争相手の取り分を奪い自国の利潤を増やしうるという「戦略的貿易政策」を示しました。ただしクルーグマン(1987年)自身は、情報不足、報復、レントシーキングの危険のため、自由貿易は依然としてよい経験則だと強調しました。クルーグマン(1991年)はこの枠組みを輸送費と組み合わせ、産業が特定の地域に集中するメカニズムを説明する「新経済地理学」を切り開きました。メリッツ(2003年)は同じ産業の中でも生産性の異なる企業を導入し、貿易を開放すると生産性の高い企業だけが輸出し低い企業は退出することで産業全体の生産性が上がるという「新々貿易理論」を示しました。バーナードら(2007年)は、実際に少数の大企業が輸出の大部分を占めるという企業レベルの証拠を整理しました。

よくある質問

新貿易理論を簡単に言うと?
国ごとに得意な分野が違うからではなく、大量生産するほど安くなる規模の経済と多様な商品を求める消費者のために、似た国どうしでも同じ種類の商品を売り買いするという理論です。
新貿易理論と比較優位論はどう違いますか?
比較優位論は国家間の技術や資源の違いに貿易の原因を求めますが、新貿易理論は違いがなくても規模の経済と製品差別化だけで貿易が生じると考え、両者は補完的な関係にあります。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Krugman, P. R. (1979). Increasing returns, monopolistic competition, and international trade. Journal of International Economics, 9(4), 469–479.
  2. Krugman, P. (1980). Scale economies, product differentiation, and the pattern of trade. American Economic Review, 70(5), 950–959.
  3. Dixit, A. K., & Stiglitz, J. E. (1977). Monopolistic competition and optimum product diversity. American Economic Review, 67(3), 297–308.
  4. Helpman, E., & Krugman, P. R. (1985). Market Structure and Foreign Trade. Cambridge, MA: MIT Press.
  5. Grubel, H. G., & Lloyd, P. J. (1975). Intra-Industry Trade: The Theory and Measurement of International Trade in Differentiated Products. London: Macmillan.
  6. Brander, J. A., & Spencer, B. J. (1985). Export subsidies and international market share rivalry. Journal of International Economics, 18(1–2), 83–100.
  7. Krugman, P. (1991). Increasing returns and economic geography. Journal of Political Economy, 99(3), 483–499.
  8. Melitz, M. J. (2003). The impact of trade on intra-industry reallocations and aggregate industry productivity. Econometrica, 71(6), 1695–1725.
  9. Bernard, A. B., Jensen, J. B., Redding, S. J., & Schott, P. K. (2007). Firms in international trade. Journal of Economic Perspectives, 21(3), 105–130.
  10. Krugman, P. R. (1987). Is free trade passé? Journal of Economic Perspectives, 1(2), 131–144.
  11. Leontief, W. (1953). Domestic production and foreign trade: The American capital position re-examined. Proceedings of the American Philosophical Society, 97(4), 332–349.
  12. Broda, C., & Weinstein, D. E. (2006). Globalization and the gains from variety. Quarterly Journal of Economics, 121(2), 541–585.
  13. Royal Swedish Academy of Sciences. (2008). Trade and Geography: Economies of Scale, Differentiated Products and Transport Costs (Scientific background on the Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences). Stockholm.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。