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オストロゴルスキーのパラドックス

🏛️ 政治・行政学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
オストロゴルスキーのパラドックスとは、有権者が複数の争点に関する立場をまとめた政党の公約のなかから1つを選ぶとき、すべての争点で多数が支持する立場をもつ政党がかえって選挙に負けてしまう現象を指します。ロシア出身の政治学者モイセイ・オストロゴルスキーが1902年に政党政治を批判して提起した問題を、ダグラス・レイとハンス・ダウトが1976年に数理的に定式化しました。多数決の結果が判断のまとめ方によって変わりうることを示す社会選択理論のパラドックスです。
目次
  1. 1. パラドックスの構造
  2. 2. 発生条件と理論的な位置づけ
  3. 3. 討議的ジレンマと多重選挙のパラドックス
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

パラドックスの構造

3つの争点(たとえば経済、外交、福祉)と2つの政党X、Yがあり、有権者を5つの集団に分けて考えてみましょう。3つの集団は、それぞれ3つの争点のうち2つでYに賛成し、1つでだけXに賛成しますが、Xに賛成する争点は集団ごとに異なります。残りの2つの集団は、すべての争点でXを支持しています。各有権者がより多くの争点で賛成する政党に投票すると、3つの集団の票を得たYが勝ちます。ところが争点ごとに数えると、すべての争点でXの立場が多数なのです。オストロゴルスキー(1902年)は、政党が異質な争点をひとまとめにして売り込み、実際の多数の意思をゆがめていると批判し、争点ごとに結成される一時的な連合を代案として示しました。レイとダウト(1976年)は、これを「複合的多数決」の特異性として定式化しました。

発生条件と理論的な位置づけ

ベゼンビンダーとファン・アッカー(1985年)は、このパラドックスが非推移的な選択、つまりコンドルセ循環とどう結びつくかを分析しました。デブとケルシー(1987年)は、政党や争点の数が増えるときにパラドックスが生じるための必要十分条件を示し、ケリー(1989年)はその構造をより簡潔に整理しました。ラフォンとレネ(2006年)は、選好が特定の構造をもてばパラドックスを回避できることを示しています。このパラドックスは、アローの不可能性定理と同じく、個人の合理的な判断を多数決で集約すると集団としての結果が一貫しなかったり直観に反したりしうるという、社会選択理論の中心的なテーマに属します。ヌルミ(1999年)は、これを投票のパラドックスの体系的な分類のなかに位置づけました。また、代議制民主主義において選挙での勝利を争点ごとの信任と解釈する慣行にも疑問を投げかけています。

討議的ジレンマと多重選挙のパラドックス

コーンハウザーとセイガー(1986年)は、複数の裁判官が前提ごとに多数決をとる場合と結論について多数決をとる場合とで判決が変わりうるという「教義のパラドックス」を示し、リストとペティット(2002年)はこれを判断集約の不可能性定理へと一般化しました。争点ごとの集約とまとめての集約が衝突するという点で、オストロゴルスキーのパラドックスと同じ系統の問題です。ブラムス、キルゴア、ツヴィッカー(1998年)は、複数の住民投票を同時に行うと、各案件の多数決の結果を組み合わせたものが、実際には誰も支持していない組み合わせになりうるという「多重選挙のパラドックス」を示しました。ダウトとレイ(1978年)は、このパラドックスを多数決の正統性の限界と結びつけています。公共選択論や中位投票者定理が扱う政党競争のモデル(ダウンズ、1957年)が単一の争点次元を仮定しているのに対し、このパラドックスは多次元的な政治の複雑さを浮き彫りにします。

よくある質問

オストロゴルスキーのパラドックスを簡単に言うと?
争点を1つずつ別々に投票すればすべてでA党の立場が勝つのに、政党単位で投票するとかえってB党が勝ちうる、というパラドックスです。
なぜ重要なのですか?
選挙で勝った政党の公約がすべて多数に支持されているわけではないことを示しています。多数決の結果が、争点のまとめ方によって変わりうることを明らかにしているのです。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Ostrogorski, M. (1902). Democracy and the Organization of Political Parties (F. Clarke, Trans.). London: Macmillan.
  2. Rae, D. W., & Daudt, H. (1976). The Ostrogorski paradox: A peculiarity of compound majority decision. European Journal of Political Research, 4(4), 391–398.
  3. Bezembinder, T., & Van Acker, P. (1985). The Ostrogorski paradox and its relation to nontransitive choice. Journal of Mathematical Sociology, 11(2), 131–158.
  4. Deb, R., & Kelsey, D. (1987). On constructing a generalized Ostrogorski paradox: Necessary and sufficient conditions. Mathematical Social Sciences, 14(2), 161–174.
  5. Kelly, J. S. (1989). The Ostrogorski paradox. Social Choice and Welfare, 6(1), 71–76.
  6. Laffond, G., & Lainé, J. (2006). Single-switch preferences and the Ostrogorski paradox. Mathematical Social Sciences, 52(1), 49–66.
  7. Kornhauser, L. A., & Sager, L. G. (1986). Unpacking the court. Yale Law Journal, 96(1), 82–117.
  8. List, C., & Pettit, P. (2002). Aggregating sets of judgments: An impossibility result. Economics and Philosophy, 18(1), 89–110.
  9. Nurmi, H. (1999). Voting Paradoxes and How to Deal with Them. Berlin: Springer.
  10. Brams, S. J., Kilgour, D. M., & Zwicker, W. S. (1998). The paradox of multiple elections. Social Choice and Welfare, 15(2), 211–236.
  11. Daudt, H., & Rae, D. W. (1978). Social contract and the limits of majority rule. In P. Birnbaum, J. Lively & G. Parry (Eds.), Democracy, Consensus and Social Contract (pp. 335–357). London: Sage.
  12. Downs, A. (1957). An Economic Theory of Democracy. New York: Harper & Row.

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。