火を燃やす空気の発見
18世紀の化学者は、物が燃えるとき「フロギストン」という成分が出ていくと信じていました。スウェーデンのカール・ヴィルヘルム・シェーレは1771〜72年ごろ、酸化水銀などを熱して火をよく燃やす「火の空気」を得ましたが、本が出たのは1777年でした。イギリスのジョゼフ・プリーストリーは1774年に独立に同じ気体をつくり、ネズミがその中で長く生きることを報告しました。アントワーヌ・ラボアジエは、この気体が燃焼や呼吸で物質と結びつく元素であることを明らかにしてフロギストン説をくつがえし、「酸をつくるもの」という意味の名(oxygène)をつけました。日本語の「酸素」もこの意味を訳したものです。だれが酸素の「発見者」なのかは、いまも興味深い議論のテーマです。
光合成、呼吸、そして酸素の歴史
大気中の酸素はほぼすべて生物がつくったものです。1937年、ロバート・ヒルは取り出した葉緑体が光を受けると酸素を出すことを示し、1941年、サミュエル・ルーベンらは重い酸素の同位体を使って、光合成の酸素は二酸化炭素ではなく水から来ることを確かめました。私たちの体では、赤血球のヘモグロビンが酸素を運び、ミトコンドリアが栄養を燃やしてエネルギーをつくるのに使われます。初期の地球の大気には酸素がほとんどありませんでしたが、シアノバクテリアの光合成によって約24億〜23億年前の「大酸化イベント」で酸素がふえ、当時の生物にとって大きな危機だったとも考えられています。酸素濃度の変化は、動物の出現や大量絶滅などとの関係も研究されています。上空の酸素はオゾン(O₃)となって紫外線をさえぎり、1985年に南極上空のオゾンホールが報告されたあと、モントリオール議定書でフロンが規制されました。
酸素と健康
健康な人の血中酸素飽和度はふつう95%以上で、パルスオキシメーターで手軽に測れます。ただしマニキュアや手のふるえ、皮膚の色などで値が不正確になることがあると報告されています。ひどい息切れ、くちびるが青い、飽和度が低いままといったときは、すぐに医療機関に相談してください。医療用酸素は肺の病気などで命を救いますが、必要以上の高い濃度を長く吸うと肺の障害などの酸素中毒が起こることがあり、COPDの人などは処方された量を守る必要があります。酸素は火を激しく燃やすので、酸素療法中の喫煙や火気は厳禁です。「酸素缶」や「酸素水」の健康効果は科学的な根拠が不十分です。この記事は一般的な情報であり、診断や治療の代わりにはなりません。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- 高い山に登ると息が苦しくなるのはなぜ?
- 高い所でも空気中の酸素の割合は約21%で同じですが、気圧が低いので1回の呼吸で入る酸素の量が減ります。急に登ると高山病になることがあるので、ゆっくり体を慣らしましょう。
- 酸素は何色?
- 気体の酸素は色もにおいもありませんが、−183℃以下に冷やした液体酸素はうすい青色で、磁石に引きつけられます。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Scheele, C. W. (1777). Chemische Abhandlung von der Luft und dem Feuer. Uppsala and Leipzig: M. Swederus.
- Priestley, J. (1775). An account of further discoveries in air. Philosophical Transactions of the Royal Society of London, 65, 384–394.
- Lavoisier, A.-L. (1789). Traité élémentaire de chimie. Paris: Cuchet.
- Chapman, S. (1930). A theory of upper-atmospheric ozone. Memoirs of the Royal Meteorological Society, 3(26), 103–125.
- Hill, R. (1937). Oxygen evolved by isolated chloroplasts. Nature, 139, 881–882.
- Ruben, S., Randall, M., Kamen, M., & Hyde, J. L. (1941). Heavy oxygen (O18) as a tracer in the study of photosynthesis. Journal of the American Chemical Society, 63(3), 877–879.
- Farman, J. C., Gardiner, B. G., & Shanklin, J. D. (1985). Large losses of total ozone in Antarctica reveal seasonal ClOx/NOx interaction. Nature, 315, 207–210.
- Holland, H. D. (2006). The oxygenation of the atmosphere and oceans. Philosophical Transactions of the Royal Society B, 361(1470), 903–915.
- Lyons, T. W., Reinhard, C. T., & Planavsky, N. J. (2014). The rise of oxygen in Earth's early ocean and atmosphere. Nature, 506, 307–315.
