酸素を運ぶ分子
赤血球1個には約2億7000万個のヘモグロビンが入っていると推定されています。このタンパク質は2種類の鎖(成人ではα鎖2本とβ鎖2本)が集まったもので、それぞれに鉄原子をもつ「ヘム」があり、最大4つの酸素分子を運べます。19世紀半ばに結晶として取り出されたのち、1904年、クリスチャン・ボーアらは二酸化炭素が多く酸性の場所ではヘモグロビンが酸素を手放しやすくなる「ボーア効果」を発見しました。そのため、よく働く筋肉ほど多くの酸素を受けとれます。また、酸素が1つ結合すると次の酸素が結合しやすくなる協同的結合のため、酸素結合曲線はS字形になり、1965年のモノー・ワイマン・シャンジューのモデルがこれを説明しました。1936年にはライナス・ポーリングが磁気的性質から酸素と鉄の結合を調べました。
構造と分子病
1959〜60年、マックス・ペルーツはX線結晶解析でヘモグロビンの立体構造を明らかにし、1962年にノーベル化学賞を受けました。1949年、ポーリングらは鎌状赤血球症の患者のヘモグロビンが電気的な性質の異なることを示して「分子病」という考えをひらき、1957年、ヴァーノン・イングラムはβ鎖のアミノ酸がたった1つ置きかわっていることが原因だと明らかにしました。遺伝子のDNAのわずかな変化が病気を起こしうることを示した初期の例です。1954年、アンソニー・アリソンは鎌状赤血球の形質を1つだけもつ人がマラリアに強いことを報告し、この遺伝子がマラリアの多い地域に多い理由を自然選択で説明しました。2023年には、CRISPRによる遺伝子編集治療が鎌状赤血球症に初めて承認されました。
数値と健康
血液検査のヘモグロビン値は貧血を判断するおもな指標です。WHOの基準では、成人男性は13 g/dL未満、妊娠していない成人女性は12 g/dL未満を貧血としますが、検査機関や年齢、標高によって基準は少しずつ異なります。最も多い原因は鉄欠乏で、疲れやすさ、めまい、息切れが出ることがあります。値が高すぎる場合も、脱水や喫煙、一部の病気のサインのことがあります。一酸化炭素は酸素の200倍以上も強くヘモグロビンに結合して酸素の運搬をさまたげるため、頭痛やめまいがあればすぐに換気して避難してください。血糖の高い状態が続くとブドウ糖がヘモグロビンに結合し、これを測ったHbA1cは過去約2〜3か月の平均的な血糖を示します。数値の解釈や鉄剤の服用は、必ず医師に相談しましょう。この記事は一般的な情報であり、診断や治療の代わりにはなりません。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- ヘモグロビンを増やすには何を食べればいい?
- 鉄欠乏が原因なら、赤身の肉、レバー、豆類、濃い緑の野菜など鉄の多い食品と、吸収を助けるビタミンCが役立ちます。ただし貧血の原因はさまざまなので、まず検査で原因を確かめましょう。
- 血はなぜ赤い?
- ヘムが光を吸収するしかたのためです。酸素が結合すると鮮やかな赤、はなれると暗い赤になります。静脈が青く見えるのは、皮膚を通る光の効果です。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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