プラセボ効果とノセボ効果とは?
プラセボ(偽薬)は有効成分を含まない錠剤や注射です。プラセボを受けた人の症状がよくなる現象をプラセボ効果といいます。反対に「副作用が出るかもしれない」という情報や不安のせいで、実際に頭痛、筋肉痛、だるさなどが出る現象をノセボ効果(ラテン語で「害するだろう」)と呼びます。プラセボ群の変化には期待だけでなく、時間とともに自然に治る経過や平均への回帰も含まれています。
なぜ起こるのか?
- 期待:よくなるという思い込みが、痛みの調節に関わる脳の領域や体内のオピオイド分泌に影響することが、画像研究や薬理研究で示されています。
- 条件づけ:薬を飲んでよくなった経験を繰り返すと、似た状況だけで体が反応するようになります。
- 注意:体のささいな感覚に意識が向くと、もともとあった症状まで副作用のように感じられます。
研究例
膝の変形性関節症の痛みの研究では、プラセボだけでもかなりの人が改善し、2006年のGAIT試験ではプラセボ群の60.1%が「痛み20%改善」の基準を超えました。2020年のNEJMのSAMSON研究では、スタチンをやめていた人がスタチン、プラセボ、何も飲まない月を交互に経験しました。症状スコアは服用なし8.0、プラセボ15.4、スタチン16.3で、スタチンの症状の約9割がプラセボでも現れました。
臨床試験と診療での意味
新しい治療が本当に効くと言えるにはプラセボ効果を上回る必要があるため、ランダム化比較試験では見た目が同じプラセボと二重盲検を使います。ただし、すでに有効な治療がある病気でプラセボだけを与えることは倫理的に制限されます。診療では、副作用を正直に伝えつつ不必要な不安をあおらない説明の仕方が、ノセボ効果を減らすのに役立つ可能性があります。スタチンとコレステロールについてはLDLコレステロールをご覧ください。
よくある質問
- プラセボ効果があるということは、症状は気のせいだったのですか?
- いいえ。プラセボやノセボの反応では脳や体に測定可能な変化が起きており、薬が偽物でも症状そのものは本物です。
出典確認日:2026-10-25
参考文献
- Benedetti, F. (2014). Placebo effects: from the neurobiological paradigm to translational implications. Neuron, 84(3), 623–637.
- Wood, F. A., et al. (2020). N-of-1 trial of a statin, placebo, or no treatment to assess side effects. New England Journal of Medicine, 383(22), 2182–2184.
- Clegg, D. O., et al. (2006). Glucosamine, chondroitin sulfate, and the two in combination for painful knee osteoarthritis. New England Journal of Medicine, 354(8), 795–808.
