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両価的性差別理論

🧠 心理学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
両価的性差別理論とは、性差別には女性をおとしめる「敵意的性差別」と、女性を純粋で守られるべき存在として持ち上げる「好意的性差別」という二つの顔があるとする社会心理学の理論です。1996年にピーター・グリックとスーザン・フィスクが示しました。一見肯定的な好意的性差別も伝統的な役割に従う女性だけに報いるため、敵意的性差別とともに不平等を維持すると説明します。
目次
  1. 1. 二つの性差別
  2. 2. 文化間の証拠と相補的な正当化
  3. 3. 好意的性差別の隠れた害
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

二つの性差別

グリックとフィスク(1996年)は、偏見を単なる反感とみる伝統的な見方では性差別を説明しきれないと考えました。男女は互いに依存し合う関係にあり、支配する側も相手に愛情や保護を示すからです。そこで、女性が権力を狙ったり男性を操ったりするとみる敵意的性差別と、女性はか弱いので守られるべきで男性を完成させる存在だとみる好意的性差別を区別しました。両方の態度を測る両価的性差別尺度(ASI)をつくり、二つの得点は正の相関を示して、同じ人が両方を抱く場合が多いことがわかりました。これはジャックマン(1994年)のいう「ビロードの手袋」のような温情主義的支配と通じています。

文化間の証拠と相補的な正当化

グリックら(2000年)は19か国の1万5千人余りを調査し、二つの性差別がほぼすべての文化に見られ、国の平均的な性差別得点が高いほど男女平等の指標が低いことを見いだしました。驚くべきことに、性差別の強い国ほど女性も好意的性差別をより支持していました。グリックとフィスク(2001年)はこれを「両価的同盟」と呼び、好意的性差別は伝統的な役割に従う女性に報い、敵意的性差別はそこから外れた女性を罰して、ともに不平等を守ると整理しました。グリックとフィスク(1999年)は、男性に対する態度にも同じ構造があることを示しました。

好意的性差別の隠れた害

ダルデンヌら(2007年)は、「女性だから手伝ってあげる」といった好意的な発言を聞いた女性が、敵意的な発言を聞いた女性よりも課題の成績が下がるという実験結果を報告しました。好意的な表現は差別だと気づきにくく、自己への疑いを生みやすいからです。ベッカーとライト(2011年)は、好意的性差別にさらされると女性が男女平等のための集団行動に参加しにくくなる一方、敵意的性差別はむしろ行動を促すことを示しました。この理論はシステム正当化理論とともに、不平等が穏やかなかたちで維持される過程を説明するのに使われています。

よくある質問

両価的性差別理論を簡単に言うと?
性差別には女性をおとしめる敵意的な顔と、女性を守るべき弱い存在として持ち上げる好意的な顔があり、両方が一緒に働くという理論です。
好意的性差別はなぜ問題なのですか?
よく見えても女性を弱く有能でない存在とみなし、伝統的な役割に従うときだけ報いるので、結果として不平等を維持するからです。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Glick, P., & Fiske, S. T. (1996). The Ambivalent Sexism Inventory: Differentiating hostile and benevolent sexism. Journal of Personality and Social Psychology, 70(3), 491–512. 敵意的・好意的性差別を区別し測定尺度をつくった原典で、理論の核心を見るのに参考になります。
  2. Glick, P., & Fiske, S. T. (2001). An ambivalent alliance: Hostile and benevolent sexism as complementary justifications for gender inequality. American Psychologist, 56(2), 109–118. 二つの性差別が補い合って不平等を正当化することを整理した論文で、理論の全体像を見るのに役立ちます。
  3. Glick, P., Fiske, S. T., Mladinic, A., Saiz, J. L., Abrams, D., Masser, B., et al. (2000). Beyond prejudice as simple antipathy: Hostile and benevolent sexism across cultures. Journal of Personality and Social Psychology, 79(5), 763–775. 19か国のデータで理論を検証した研究で、性差別の程度と男女不平等の関係を見るのに参考になります。
  4. Glick, P., & Fiske, S. T. (1999). The Ambivalence Toward Men Inventory: Differentiating hostile and benevolent beliefs about men. Psychology of Women Quarterly, 23(3), 519–536. 男性に対する両価的態度へ理論を広げた尺度研究で、理論の拡張を見るのに役立ちます。
  5. Dardenne, B., Dumont, M., & Bollier, T. (2007). Insidious dangers of benevolent sexism: Consequences for women's performance. Journal of Personality and Social Psychology, 93(5), 764–779. 親切に見える好意的性差別が女性の成績を下げることを示した実験で、その害を見るのに参考になります。
  6. Becker, J. C., & Wright, S. C. (2011). Yet another dark side of chivalry: Benevolent sexism undermines and hostile sexism motivates collective action for social change. Journal of Personality and Social Psychology, 101(1), 62–77. 好意的性差別が社会変化に向けた集団行動を弱めることを示した研究で、政治的な意味を見るのに役立ちます。
  7. Jackman, M. R. (1994). The Velvet Glove: Paternalism and Conflict in Gender, Class, and Race Relations. Berkeley: University of California Press. 温情主義が支配を穏やかに保つ仕組みを分析した本で、理論の社会学的背景を見るのに参考になります。

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。