発見と微生物学の誕生
1676年、オランダのアントニ・ファン・レーウェンフックは自作の顕微鏡で雨水や歯垢の中にうごめく「微小動物」を見つけ、英国王立協会に手紙で報告しました。細菌が病気を起こすという考えが受け入れられるには、さらに2世紀かかりました。1860年代にルイ・パスツールは白鳥の首フラスコの実験で自然発生説を否定して低温殺菌法を開発し、ロベルト・コッホは1876年に炭疽菌、1882年に結核菌、1883年にコレラ菌を見つけ、特定の微生物が特定の病気を起こすとする「コッホの原則」を打ち立てました。コッホの下で学んだ北里柴三郎は1889年に破傷風菌の純粋培養に成功しています。1884年にハンス・クリスチャン・グラムが考案したグラム染色は、今も細菌を陽性・陰性に分ける基本検査です。
構造と種類
細菌はDNAが核膜に包まれず細胞質に浮かぶ原核生物で、細胞膜・細胞壁・リボソームを持ち、一部は鞭毛で泳ぎます。条件がよければ20分ごとに分裂するほど速く増え、プラスミドを通じて周囲の細菌と遺伝子をやり取りすることもあります。1977年、カール・ウーズはリボソームRNAの比較から細菌と古細菌が別の「ドメイン」であることを示し、生命の系統樹を描き直しました。形によって一般に3つに分けられます。
| 形態 | 形 | 代表例 |
|---|---|---|
| 球菌 | 球形 | ブドウ球菌、肺炎球菌 |
| 桿菌 | 棒状 | 大腸菌、結核菌 |
| らせん菌 | らせん・S字形 | ピロリ菌、梅毒トレポネーマ |
役立つ細菌、害をなす細菌
人の体には自分の細胞数と同じくらい、約38兆個の細菌がすみ、とくに腸内細菌叢は消化や免疫、ビタミン合成を助けます。ヨーグルトや味噌、納豆をつくる菌、植物のために窒素を固定する根粒菌もいます。一方、結核菌やサルモネラ、黄色ブドウ球菌のように組織に侵入したり毒素を出したりして病気を起こす菌には白血球が立ち向かい、抗菌薬で治療します。抗菌薬を乱用すると生き残った菌が広がる薬剤耐性が生まれ、世界保健機関(WHO)は主要な健康上の脅威に挙げています。かぜなどウイルス性の病気に抗菌薬は効きません。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- 細菌とウイルスは何が違いますか?
- 細菌は自分で栄養をとって分裂する生きた細胞です。ウイルスは細菌よりはるかに小さく細胞構造を持たず、宿主の細胞の中でしか増えません。そのため抗菌薬は細菌には効きますがウイルスには効きません。
- アルコール消毒で細菌はすべて死にますか?
- 濃度60%以上のアルコールは多くの細菌をすばやく減らしますが、目に見えて汚れた手やノロウイルス、クロストリディオイデス・ディフィシルの芽胞には石けんと流水の手洗いがより効果的です。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Leeuwenhoek, A. van (1677). Observations concerning little animals observed in rain-, well-, sea- and snow-water. Philosophical Transactions, 12, 821–831.
- Pasteur, L. (1862). Mémoire sur les corpuscules organisés qui existent dans l'atmosphère. Annales des Sciences Naturelles (Zoologie), 4e sér., 16, 5–98.
- Koch, R. (1882). Die Ätiologie der Tuberculose. Berliner Klinische Wochenschrift, 19, 221–230.
- Gram, C. (1884). Über die isolierte Färbung der Schizomyceten in Schnitt- und Trockenpräparaten. Fortschritte der Medizin, 2, 185–189.
- Woese, C. R., & Fox, G. E. (1977). Phylogenetic structure of the prokaryotic domain: The primary kingdoms. PNAS, 74(11), 5088–5090.
- Sender, R., Fuchs, S., & Milo, R. (2016). Revised estimates for the number of human and bacteria cells in the body. PLOS Biology, 14(8), e1002533.
- Madigan, M. T., et al. (2019). Brock Biology of Microorganisms (15th ed.). Pearson.
