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ベイトマンの原理

🔬 自然科学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ベイトマンの原理とは、英国の遺伝学者アンガス・ベイトマンが1948年のショウジョウバエ実験をもとに示した一般化で、雄は交尾相手が多いほど繁殖成功が大きく増えるが雌はその効果が小さいため、雄の繁殖成功の分散がより大きく、したがって性選択が雄により強く働くという原理です。
目次
  1. 1. ベイトマンの実験
  2. 2. 理論的発展
  3. 3. 再検討とメタ分析
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

ベイトマンの実験

ベイトマン(1948年)は、眼の形など異なる優性標識をもつショウジョウバエの系統を同じ瓶に入れ、子の標識から親を推定しました。その結果、雄は交尾相手が多いほど子の数が大きく増えましたが、雌は1回交尾した後は相手の数が増えても子の数はほとんど増えませんでした。また、子をまったく残せなかった個体の割合と繁殖成功の分散も雄の方が大きくなりました。彼はこの差を大きな卵と小さな精子をつくるコストの違い、すなわち異型配偶に由来すると考え、性選択が雄により強く働く理由と解釈しました。

理論的発展

トリヴァース(1972年)はベイトマンの研究を親の投資理論へと拡張し、子により多く投資する性が配偶者を選ぶ側となり、投資の少ない性が配偶者をめぐって競争すると論じました。ウェイド(1979年)は繁殖成功の分散を選択の機会として定量化し、アーノルドとデュヴァル(1994年)は交尾相手数に対する繁殖成功の回帰の傾きを「ベイトマン勾配」と定義しました。クラットン=ブロックとヴィンセント(1991年)は性ごとの潜在的繁殖速度の差が性役割を決めると考え、ジョーンズら(2000年)は雄が妊娠するヨウジウオで性役割の逆転したベイトマン勾配を確認しました。

再検討とメタ分析

スナイダーとゴワティ(2007年)はベイトマンの元データを再分析し、標識法の限界により親の推定に偏りがあったと指摘し、ゴワティ、キム、アンダーソン(2012年)は同じ実験を再現したところ明確な証拠が得られなかったと報告しました。タン=マルティネス(2016年)は、雌も複数回交尾から利益を得る例が多いとして、固定的な性役割観を批判しました。一方、フリッチェとアーンクヴィスト(2013年)、ヤニッケら(2016年)は多様な動物分類群のメタ分析で、平均的に雄のベイトマン勾配と選択の機会の方が大きいと報告しました。コッコとジェニオンズ(2008年)は、性比と親の投資が共進化する点を強調しました。

よくある質問

ベイトマンの原理を簡単に言うと?
雄は交尾相手が増えるほど子が大きく増えるが、雌はそれほど増えないため、雄どうしの競争の方が激しくなりやすいという原理です。
ベイトマンの原理は今も認められていますか?
元の実験の方法には批判がありますが、多くの動物群を対象にしたメタ分析は、平均的に雄の方が性選択が強いという傾向を支持しています。ただし種によっては例外や性役割の逆転も多く見られます。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Bateman, A. J. (1948). Intra-sexual selection in Drosophila. Heredity, 2(3), 349–368.
  2. Darwin, C. (1871). The Descent of Man, and Selection in Relation to Sex. London: John Murray.
  3. Trivers, R. L. (1972). Parental investment and sexual selection. In B. Campbell (Ed.), Sexual Selection and the Descent of Man 1871–1971 (pp. 136–179). Chicago: Aldine.
  4. Wade, M. J. (1979). Sexual selection and variance in reproductive success. American Naturalist, 114(5), 742–747.
  5. Arnold, S. J., & Duvall, D. (1994). Animal mating systems: A synthesis based on selection theory. American Naturalist, 143(2), 317–348.
  6. Clutton-Brock, T. H., & Vincent, A. C. J. (1991). Sexual selection and the potential reproductive rates of males and females. Nature, 351(6321), 58–60.
  7. Jones, A. G., Rosenqvist, G., Berglund, A., Arnold, S. J., & Avise, J. C. (2000). The Bateman gradient and the cause of sexual selection in a sex-role-reversed pipefish. Proceedings of the Royal Society B, 267(1444), 677–680.
  8. Snyder, B. F., & Gowaty, P. A. (2007). A reappraisal of Bateman's classic study of intrasexual selection. Evolution, 61(11), 2457–2468.
  9. Gowaty, P. A., Kim, Y.-K., & Anderson, W. W. (2012). No evidence of sexual selection in a repetition of Bateman's classic study of Drosophila melanogaster. PNAS, 109(29), 11740–11745.
  10. Tang-Martínez, Z. (2016). Rethinking Bateman's principles: Challenging persistent myths of sexually reluctant females and promiscuous males. Journal of Sex Research, 53(4–5), 532–559.
  11. Kokko, H., & Jennions, M. D. (2008). Parental investment, sexual selection and sex ratios. Journal of Evolutionary Biology, 21(4), 919–948.
  12. Janicke, T., Häderer, I. K., Lajeunesse, M. J., & Anthes, N. (2016). Darwinian sex roles confirmed across the animal kingdom. Science Advances, 2(2), e1500983.
  13. Fritzsche, K., & Arnqvist, G. (2013). Homage to Bateman: Sex roles predict sex differences in sexual selection. Evolution, 67(7), 1926–1936.

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。