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ダイナミック・ケイパビリティ

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ダイナミック・ケイパビリティ論は、技術と市場が急速に変化する環境において、企業が内部と外部の能力を統合し、新たに構築し、再構成する高次の能力こそが長期的な競争優位の源泉だとする経営戦略論です。デイヴィッド・ティース、ゲイリー・ピサノ、エイミー・シュエン(1997年)が提示しました。
目次
  1. 1. 登場の背景
  2. 2. 感知・捕捉・変容とミクロ的基礎
  3. 3. 論争と展開
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

登場の背景

資源ベース理論は価値があり模倣困難な資源が競争優位を生むと説明しましたが、技術変化の速い産業では、かつての強みだった資源がすぐに陳腐化してしまいます。レナード=バートン(1992年)は、企業のコア能力は環境が変わるとかえって変化を妨げる「コア・リジディティ」になりうると指摘しました。この問題意識は、シュンペーター(1942年)の創造的破壊と、企業を反復的な行動パターンである「ルーティン」の集合とみなしたネルソンとウィンター(1982年)の進化経済学に根ざしています。ティース、ピサノ、シュエン(1997年)はこれらを総合し、ダイナミック・ケイパビリティを「急速に変化する環境に対応するために内部と外部の能力を統合・構築・再構成する企業の能力」と定義しました。彼らは、企業の優位は組織的・管理的なプロセス、現在の資産ポジション、そしてこれまでたどってきた経路によって形づくられると考えました。

感知・捕捉・変容とミクロ的基礎

ティース(2007年)はダイナミック・ケイパビリティを3つにまとめました。技術と市場の機会と脅威に気づく「感知(センシング)」、その機会をビジネスモデルと投資判断によってつかむ「捕捉(シージング)」、そして資産と組織構造を組み替えて新しい環境に合わせる「変容(トランスフォーミング)」です。彼はこれらの能力が経営者の判断、組織の学習プロセス、ガバナンスといったミクロ的基礎に根ざしていると強調しました。コーエンとレビンサール(1990年)の「吸収能力」、すなわち外部知識の価値を見抜き、吸収して活用する能力は感知の段階と密接に関係します。ゾロとウィンター(2002年)は経験の蓄積、知識の明文化と共有といった意図的な学習がダイナミック・ケイパビリティを進化させると論じ、ウィンター(2003年)は日常業務を遂行する「ゼロ次の能力」とそれを変える「高次の能力」を区別しました。ヘルファットとピーテラフ(2003年)は、能力が誕生、成長、成熟をたどる「ケイパビリティ・ライフサイクル」の概念を提案しました。

論争と展開

アイゼンハートとマーティン(2000年)は、ダイナミック・ケイパビリティは神秘的なものではなく、製品開発、戦略的意思決定、提携や買収といった具体的で識別可能な組織プロセスであり、企業間でかなり似通った「ベストプラクティス」の形をとると主張しました。したがって、それ自体が持続的な優位をもたらすというより、資源構成を変える手段だというのです。特に変化の非常に速い市場では、精緻なルーティンより単純なルールのほうが有効だと論じました。オライリーとタッシュマン(2008年)は、既存事業の効率を高める「深化」と新たな機会を探る「探索」を同時に行う「両利きの経営」をダイナミック・ケイパビリティの一形態とみなしました。批判者は概念の曖昧さと測定の難しさを指摘してきており、シルケ、フー、ヘルファット(2018年)は数百本の研究を分析し、概念は収れんしつつあるものの測定と業績との結びつきはなお課題だと整理しました。この理論は経路依存性の研究とともに、デジタル・トランスフォーメーションや産業再編を説明する枠組みとして広く用いられています。

よくある質問

ダイナミック・ケイパビリティを簡単に言うと?
今ある資源をうまく使う能力を超えて、環境が変わったときに新しい機会に気づいてつかみ、組織と資源を組み替える能力のことです。
資源ベース理論とどう違いますか?
資源ベース理論が現在保有する資源の特性に注目するのに対し、ダイナミック・ケイパビリティ論はその資源を時間とともに変え、新たに生み出す能力に焦点を当てます。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Teece, D. J., Pisano, G., & Shuen, A. (1997). Dynamic capabilities and strategic management. Strategic Management Journal, 18(7), 509–533.
  2. Schumpeter, J. A. (1942). Capitalism, Socialism and Democracy. New York: Harper & Brothers.
  3. Nelson, R. R., & Winter, S. G. (1982). An Evolutionary Theory of Economic Change. Cambridge, MA: Belknap Press.
  4. Leonard-Barton, D. (1992). Core capabilities and core rigidities: A paradox in managing new product development. Strategic Management Journal, 13(S1), 111–125.
  5. Cohen, W. M., & Levinthal, D. A. (1990). Absorptive capacity: A new perspective on learning and innovation. Administrative Science Quarterly, 35(1), 128–152.
  6. Eisenhardt, K. M., & Martin, J. A. (2000). Dynamic capabilities: What are they? Strategic Management Journal, 21(10–11), 1105–1121.
  7. Zollo, M., & Winter, S. G. (2002). Deliberate learning and the evolution of dynamic capabilities. Organization Science, 13(3), 339–351.
  8. Winter, S. G. (2003). Understanding dynamic capabilities. Strategic Management Journal, 24(10), 991–995.
  9. Helfat, C. E., & Peteraf, M. A. (2003). The dynamic resource-based view: Capability lifecycles. Strategic Management Journal, 24(10), 997–1010.
  10. Teece, D. J. (2007). Explicating dynamic capabilities: The nature and microfoundations of (sustainable) enterprise performance. Strategic Management Journal, 28(13), 1319–1350.
  11. Helfat, C. E., Finkelstein, S., Mitchell, W., Peteraf, M., Singh, H., Teece, D., & Winter, S. G. (2007). Dynamic Capabilities: Understanding Strategic Change in Organizations. Malden, MA: Blackwell.
  12. O'Reilly, C. A., & Tushman, M. L. (2008). Ambidexterity as a dynamic capability: Resolving the innovator's dilemma. Research in Organizational Behavior, 28, 185–206.
  13. Schilke, O., Hu, S., & Helfat, C. E. (2018). Quo vadis, dynamic capabilities? A content-analytic review of the current state of knowledge and recommendations for future research. Academy of Management Annals, 12(1), 390–439.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。