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ティボー・モデル

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ティボー・モデルは、住民が税と公共サービスの組み合わせが自分の選好に合う地域を選んで移り住む「足による投票」を通じて、市場のように地方公共財が効率的に供給されうるとする地方財政理論です。チャールズ・ティボーが1956年に提示しました。
目次
  1. 1. サミュエルソンへの応答
  2. 2. 仮定と実証
  3. 3. 批判と政策的含意
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

サミュエルソンへの応答

サミュエルソン(1954年)は、公共財は非競合的で排除が難しいため人々が選好を隠してただ乗りし、市場のように効率的に供給できないと論じました。若い経済学者ティボーは1956年の「地方支出の純粋理論」で、少なくとも地方公共財には解決策があると反論しました。多くの地方政府が異なる税と公共サービス(学校、公園、治安など)の組み合わせを提示すれば、住民は自分の選好に最も合う場所に引っ越すことで選好を表明します。これが「足による投票」です。地方政府は住民獲得のため競争し、似た選好を持つ人々が集まって、各地域で望まれる量の公共財が効率的に供給されるというのです。この論文は公共選択論と財政分権論の古典となりました。

仮定と実証

ティボーの結論は強い仮定に依拠します。①住民の完全な移動性、②各地域の税とサービスについての完全情報、③十分に多い地域数、④雇用の制約なし(配当所得で生活)、⑤地域間の波及効果(外部性)なし、⑥最適規模の存在、⑦最適規模に向けた地域の参入・退出です。オーツ(1969年)はニュージャージー州のデータで、良い学校と低い固定資産税が住宅価格に反映される「資本化」を示し、ティボーのメカニズムを間接的に支持しました。ブラック(1999年)は学区境界の両側の住宅価格差から学校の質の価値を推計し、ホクスビー(2000年)は学区の多い大都市圏ほど公立学校の成果が高いと報告しました。バンザフとウォルシュ(2008年)は大気汚染が改善した地域への人口流入を示し、「足による投票」を直接確認しました。

批判と政策的含意

批判者は、現実の住民は仕事、家族、引っ越し費用のため容易に移動できず、情報も不完全だと指摘します。ビューリー(1981年)は厳密な条件下でティボー均衡が効率的でないことがありうると示しました。より深刻なのは公平性の問題です。ハミルトン(1975年)が指摘したように、裕福な地域はゾーニングで低所得層の流入を防げるため、所得別の居住分離と学校格差が深まりえます。フィッシェル(2001年)の「ホームボーター仮説」は、住宅価値を守ろうとする住民が地方政治を左右すると説明します。それでもオーツ(1972年)の「分権化定理」とともに、ティボー・モデルは財政連邦主義の理論的基礎となりました。ハーシュマン(1970年)の「離脱と発言」の枠組みでは、ティボー・モデルは離脱を、中位投票者定理は発言を代表します。日本のふるさと納税や地方創生の議論にも示唆を与えます。

よくある質問

ティボー・モデルを簡単に言うと?
人々が税や学校、公園などの公共サービスが気に入った地域に引っ越すことで、地方政府が競争し、公共サービスが効率的に供給されるという理論です。
ティボー・モデルの最大の問題は何ですか?
引っ越しが容易でないという現実的な限界に加え、裕福な地域が低所得層を排除して居住分離や教育格差を広げうるという公平性の問題が指摘されています。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Tiebout, C. M. (1956). A pure theory of local expenditures. Journal of Political Economy, 64(5), 416–424.
  2. Oates, W. E. (1969). The effects of property taxes and local public spending on property values. Journal of Political Economy, 77(6), 957–971.
  3. Oates, W. E. (1972). Fiscal Federalism. New York: Harcourt Brace Jovanovich.
  4. Samuelson, P. A. (1954). The pure theory of public expenditure. Review of Economics and Statistics, 36(4), 387–389.
  5. Hamilton, B. W. (1975). Zoning and property taxation in a system of local governments. Urban Studies, 12(2), 205–211.
  6. Bewley, T. F. (1981). A critique of Tiebout's theory of local public expenditures. Econometrica, 49(3), 713–740.
  7. Fischel, W. A. (2001). The Homevoter Hypothesis. Cambridge, MA: Harvard University Press.
  8. Banzhaf, H. S., & Walsh, R. P. (2008). Do people vote with their feet? An empirical test of Tiebout's mechanism. American Economic Review, 98(3), 843–863.
  9. Dowding, K., John, P., & Biggs, S. (1994). Tiebout: A survey of the empirical literature. Urban Studies, 31(4–5), 767–797.
  10. Hoxby, C. M. (2000). Does competition among public schools benefit students and taxpayers? American Economic Review, 90(5), 1209–1238.
  11. Black, S. E. (1999). Do better schools matter? Parental valuation of elementary education. Quarterly Journal of Economics, 114(2), 577–599.
  12. Oates, W. E. (1999). An essay on fiscal federalism. Journal of Economic Literature, 37(3), 1120–1149.
  13. Hirschman, A. O. (1970). Exit, Voice, and Loyalty. Cambridge, MA: Harvard University Press.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。