治療の歩み
1920年代、欧州で胸部交感神経を切る手術が初めて試みられ、1930年代には水道水イオントフォレーシスが考案されました。1990年代に胸腔鏡下交感神経遮断術が広まりましたが、別の部位の汗が増える代償性発汗が大きな問題として知られるようになりました。米国では2004年にボツリヌス毒素が脇の多汗症に承認され、日本でも2012年に重度の腋窩多汗症へ保険適用されました。さらに2020年以降、日本では外用抗コリン薬(エクロックゲル、ラピフォートワイプ)や手のひら用のアポハイドローションが相次いで承認され、治療の選択肢が広がっています。
原因と診断
多くは特別な原因のない原発性局所多汗症で、思春期前後に始まり、両側の手のひら・足の裏・脇に左右対称に汗をかき、睡眠中は減り、家族歴があることが少なくありません。一方、全身の汗や夜間の寝汗がひどいときは、甲状腺機能亢進症、更年期のほてり、糖尿病、感染症、薬の副作用といった続発性の原因をまず調べます。握手や筆記、スマホ操作がつらく人を避けるようになり、社交不安や気分の落ち込みにつながることもあります。
段階的な治療
まずは塩化アルミニウム外用剤を就寝前の乾いた肌に塗り、朝に洗い流します。効果が不十分なら外用抗コリン薬、手足には水道水イオントフォレーシスを試します。脇や手のひらのボトックス注射は4〜9か月ほど効果が続き、脇はマイクロ波で汗腺を壊す治療もあります。内服の抗コリン薬は全身の汗を減らしますが口の渇きや便秘が出ることがあります。交感神経遮断術は手汗に効果が高いものの、代償性発汗は元に戻しにくいため十分に相談してから慎重に決めましょう。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- 保険は使えますか?
- 外用薬や重度腋窩多汗症のボトックスなど、条件を満たせば保険適用になる治療があります。
- 汗が多いとワキガですか?
- 汗の量とにおいは別物で、ワキガはアポクリン汗腺の分泌物が細菌に分解されて起こります。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Nawrocki, S., & Cha, J. (2019). The etiology, diagnosis, and management of hyperhidrosis: A comprehensive review. JAAD, 81(3), 657–666.
- Strutton, D. R., et al. (2004). US prevalence of hyperhidrosis and impact on individuals with axillary hyperhidrosis. JAAD, 51(2), 241–248.
- Glaser, D. A., et al. (2019). Topical glycopyrronium tosylate for primary axillary hyperhidrosis. JAAD, 80(1), 128–138.
