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ランダムウォーク仮説

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ランダムウォーク仮説は、株式などの資産価格の変化は互いに独立で無作為であり、過去の価格の動きから将来の価格変化を体系的に予測することはできないとする金融経済学の仮説です。ルイ・バシュリエ(1900年)の研究に端を発し、1960年代にポール・サミュエルソンとユージン・ファーマが理論的・実証的な基礎を固めました。
目次
  1. 1. 起源と初期の研究
  2. 2. 理論的根拠と効率的市場仮説
  3. 3. 反論と最近の視点
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

起源と初期の研究

ルイ・バシュリエ(1900年)はパリ証券取引所の価格変動を確率過程としてモデル化し、投機家の数学的期待値はゼロだと論じました。アルフレッド・カウルズ(1933年)は、専門家による株式市場の予測が偶然以上の成果を上げていないと報告し、モーリス・ケンドール(1953年)は英国の株価と商品価格の時系列を分析して、価格変化がまるで「偶然の悪魔」が無作為に数字を引いているかのように振る舞うと驚きを示しました。物理学者のオズボーン(1959年)は、株価の対数変化がブラウン運動に似ていることを示しました。これらの研究は、価格変化には予測可能なパターンがあるという通念に疑問を投げかけました。

理論的根拠と効率的市場仮説

ポール・サミュエルソン(1965年)は「適切に予想された価格は無作為に変動する」という論文で、合理的な参加者がすべての情報を価格に織り込むなら、将来の価格変化は今日知りえない新しい情報にのみ反応するため予測できないことを数学的に示しました。厳密には価格がマルチンゲールに従うという結論であり、厳格なランダムウォークより弱い条件です。ユージン・ファーマ(1965年)はダウ・ジョーンズ銘柄の収益率にほとんど自己相関がないことを実証し、ファーマ(1970年)はこれを効率的市場仮説として体系化しました。バートン・マルキール(1973年)の『ウォール街のランダム・ウォーカー』はこの考え方を広く一般に知らしめました。ランダムウォークは市場の効率性から導かれる含意の一つですが、両者は完全に同じではないという点が、その後の議論の中心となりました。

反論と最近の視点

ローとマッキンレー(1988年)は、収益率の分散が期間に比例して増えるはずだという性質を利用した「分散比検定」により、米国の週次株価指数はランダムウォークに従わないという結果を得ました。ポターバとサマーズ(1988年)は長期の収益率に「平均回帰」の傾向があることを報告し、ジェガディーシュとティットマン(1993年)は、過去3~12か月の収益率が高い株がその後も高い収益を上げる「モメンタム」現象を示しました。ただし、こうした予測可能性は、取引コスト、時間とともに変わるリスク・プレミアム、データ・マイニングの問題のために、実際の超過利益にはつながらない可能性があります。ローとマッキンレー(1999年)はこれらの研究を『ウォール街のノン・ランダム・ウォーク』にまとめ、ロー(2004年)は、市場の効率性が環境と参加者の適応に応じて時期ごとに変化するという「適応的市場仮説」を提案しました。ランダムウォーク仮説はオプション価格モデルの基本的な仮定でもあり、情報カスケードのような行動的な説明との対比のなかで研究が続けられています。

よくある質問

ランダムウォーク仮説を簡単に言うと?
株価の明日の動きは過去の動きとは無関係にコイン投げのように無作為なので、過去のチャートだけでは将来を安定して当てられないという仮説です。
効率的市場仮説と同じものですか?
密接に関連していますが同じではありません。効率的な市場では新しい情報だけが価格を動かすためランダムウォークに近い動きが生じますが、リスク・プレミアムが時間とともに変化すれば、効率的な市場でもある程度の予測可能性が生じえます。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Bachelier, L. (1900). Théorie de la spéculation. Annales scientifiques de l'École Normale Supérieure, 17, 21–86.
  2. Cowles, A. (1933). Can stock market forecasters forecast? Econometrica, 1(3), 309–324.
  3. Kendall, M. G. (1953). The analysis of economic time-series—Part I: Prices. Journal of the Royal Statistical Society Series A, 116(1), 11–34.
  4. Osborne, M. F. M. (1959). Brownian motion in the stock market. Operations Research, 7(2), 145–173.
  5. Samuelson, P. A. (1965). Proof that properly anticipated prices fluctuate randomly. Industrial Management Review, 6(2), 41–49.
  6. Fama, E. F. (1965). The behavior of stock-market prices. Journal of Business, 38(1), 34–105.
  7. Fama, E. F. (1970). Efficient capital markets: A review of theory and empirical work. Journal of Finance, 25(2), 383–417.
  8. Malkiel, B. G. (1973). A Random Walk Down Wall Street. New York: W. W. Norton.
  9. Lo, A. W., & MacKinlay, A. C. (1988). Stock market prices do not follow random walks: Evidence from a simple specification test. Review of Financial Studies, 1(1), 41–66.
  10. Poterba, J. M., & Summers, L. H. (1988). Mean reversion in stock prices: Evidence and implications. Journal of Financial Economics, 22(1), 27–59.
  11. Jegadeesh, N., & Titman, S. (1993). Returns to buying winners and selling losers: Implications for stock market efficiency. Journal of Finance, 48(1), 65–91.
  12. Lo, A. W., & MacKinlay, A. C. (1999). A Non-Random Walk Down Wall Street. Princeton: Princeton University Press.
  13. Lo, A. W. (2004). The adaptive markets hypothesis. Journal of Portfolio Management, 30(5), 15–29.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。