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規制の虜

🏛️ 政治・行政学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
規制の虜(規制のとりこ)とは、公共の利益のために設立された規制機関が時間とともに規制対象の産業や利益集団の利益を優先するようになる現象で、政府の失敗の代表的な形とされます。
目次
  1. 1. 概念と初期の研究
  2. 2. 経済的規制理論
  3. 3. メカニズム、実証、処方
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

概念と初期の研究

規制は通常、独占や安全の問題といった市場の失敗を是正するために導入されます。ところがサミュエル・ハンティントン(1952年)は、米国の州際通商委員会が鉄道産業を監督するよりもその利益を守るようになったと批判しました。マーヴァー・バーンスタイン(1955年)は、独立規制委員会が発足当初の改革の熱意を失い、やがて規制対象と近しくなる「ライフサイクル」をたどると説明しました。このように規制機関が監視すべき相手にかえって支配される現象を規制の虜と呼びます。その結果として新規参入の制限、値上げの容認、緩い監督などが現れます。

経済的規制理論

ジョージ・スティグラー(1971年)は「経済的規制の理論」で、規制はたいてい産業が求めて獲得し、主に産業の利益のために設計・運用されると主張しました。利益が少数の企業に集中し費用が多数の消費者に分散するため、集合行為に有利な組織化された少数派が政治的影響力を得るというのです。これは公共選択論やレントシーキングの研究につながりました。サム・ペルツマン(1976年)は、規制者が政治的支持を最大化するため生産者と消費者の利益をはかりにかけるとして一般化し、ゲーリー・ベッカー(1983年)は圧力団体間の競争モデルを築きました。ラフォンとティロール(1991年)は、規制機関が政府よりも企業の情報を多くもつという情報の非対称性とエージェンシー問題から捕囚をモデル化し、それを防ぐインセンティブ設計を分析しました。

メカニズム、実証、処方

捕囚の経路としては、ロビー活動と政治資金、規制当局者が産業界へ移る「回転ドア」人事、情報や専門性の産業への依存などが挙げられます。ルッカ、セル、トレッビ(2014年)は米国の銀行監督人員の移動データで回転ドア現象を分析し、ジャンコフら(2002年)は参入規制の多い国ほど汚職がひどく品質改善の効果もないことを示して、規制の捕囚の可能性を裏づけました。2008年の金融危機後、ジェームズ・クワック(2014年)は直接の買収がなくても規制者が業界と同じ世界観や社会的関係を共有する「文化的捕囚」を提示しました。一方、カーペンターとモス(2014年)は「捕囚」という言葉が根拠なく過剰に使われているとして、強い捕囚と弱い捕囚を区別し測定基準を定めるべきだと主張しました。処方としては、規制機関の透明性、利害関係の開示、退職後の就職制限、消費者代表の参加、独立した研究能力の強化などが議論されています。

よくある質問

規制の虜は汚職と同じ意味ですか?
重なりますが同じではありません。賄賂のような違法な汚職がなくても、情報への依存、回転ドア人事、文化的な同質性によって規制が産業側に傾くことがあります。
規制の虜があるなら規制をなくすべきですか?
必ずしもそうではありません。規制をなくすと元の市場の失敗が再び生じうるため、捕囚を減らす制度設計と規制の費用・便益の比較があわせて議論されます。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Bernstein, M. H. (1955). Regulating Business by Independent Commission. Princeton, NJ: Princeton University Press.
  2. Huntington, S. P. (1952). The marasmus of the ICC: The commission, the railroads, and the public interest. Yale Law Journal, 61(4), 467–509.
  3. Stigler, G. J. (1971). The theory of economic regulation. Bell Journal of Economics and Management Science, 2(1), 3–21.
  4. Posner, R. A. (1974). Theories of economic regulation. Bell Journal of Economics and Management Science, 5(2), 335–358.
  5. Peltzman, S. (1976). Toward a more general theory of regulation. Journal of Law and Economics, 19(2), 211–240.
  6. Becker, G. S. (1983). A theory of competition among pressure groups for political influence. Quarterly Journal of Economics, 98(3), 371–400.
  7. Laffont, J.-J., & Tirole, J. (1991). The politics of government decision-making: A theory of regulatory capture. Quarterly Journal of Economics, 106(4), 1089–1127.
  8. Dal Bó, E. (2006). Regulatory capture: A review. Oxford Review of Economic Policy, 22(2), 203–225.
  9. Kwak, J. (2014). Cultural capture and the financial crisis. In D. Carpenter & D. A. Moss (Eds.), Preventing Regulatory Capture (pp. 71–98). Cambridge: Cambridge University Press.
  10. Carpenter, D., & Moss, D. A. (Eds.). (2014). Preventing Regulatory Capture: Special Interest Influence and How to Limit It. Cambridge: Cambridge University Press.
  11. Djankov, S., La Porta, R., Lopez-de-Silanes, F., & Shleifer, A. (2002). The regulation of entry. Quarterly Journal of Economics, 117(1), 1–37.
  12. Lucca, D., Seru, A., & Trebbi, F. (2014). The revolving door and worker flows in banking regulation. Journal of Monetary Economics, 65, 17–32.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。