危機の発端
イオアニディス(2005年)は、標本と効果が小さく分析の柔軟性が大きいほど、発表された研究結果が誤りである確率が高まるというモデルを示し、大きな反響を呼びました。2011年にはベムが未来を予感する超能力の存在を示すとする実験結果を一流誌に発表し、標準的な統計の慣行がいかに容易に非現実的な結果を「有意」にしうるかへの懸念が高まりました。同じ年、シモンズ、ネルソン、シモンソン(2011年)は、標本の大きさ、測定変数、統制変数を自由に選ぶだけで偽陽性率が60%を超えうることをシミュレーションで示しました。ジョン、ローウェンスタイン、プレレック(2012年)の調査では、多くの心理学者が結果を見てデータ収集をやめたり、一部の条件だけを報告したりする疑わしい研究実践を認めました。
大規模な再現研究の結果
オープンサイエンス・コラボレーション(2015年)は三つの主要な心理学誌に載った100の研究を再び実験し、元の研究の97%が有意だったのに対し、再現研究で有意な結果を得たのは約36%で、効果量は平均して半分ほどでした。医学では、ベグリーとエリス(2012年)が画期的な前臨床のがん研究53件のうち再現されたのは6件だけだったと報告しました。カメラーら(2016年)は実験経済学の研究18件のうち11件、カメラーら(2018年)は『ネイチャー』と『サイエンス』に掲載された社会科学の実験21件のうち13件が再現されたと明らかにしました。バトンら(2013年)は神経科学研究の統計的検出力が非常に低いことを指摘し、ベイカー(2016年)の調査では研究者の70%以上が他の研究者の実験の再現に失敗した経験があると答えました。
原因と改革
再現性の危機の原因として、小さな標本と低い検出力、p値0.05の基準を越えるための分析操作(pハッキング)、結果を見てから仮説を立てる慣行、そして有意な結果だけが出版される出版バイアスが挙げられます。これは、成果指標が目標になるとゆがみが生じるというグッドハートの法則や、期待に合う証拠を好む確証バイアスともつながります。ムナフォら(2017年)は事前登録、登録報告、データとコードの公開、共同研究を含む改革宣言を発表し、ベンジャミンら(2018年)は新しい発見の有意水準を0.005に下げることを提案しました。ノセックら(2022年)は、こうした改革の後に再現可能性、頑健性、再生産性の概念が整理され、研究実践が実際に変わりつつあるとまとめています。再現性の危機は、マートンの科学規範のうち組織化された懐疑主義が制度として機能しなければならないことを改めて示しました。
よくある質問
- 再現性の危機を簡単に言うと?
- 有名な学術誌に載った実験を他の研究者が同じようにやり直したところ、かなりの数で同じ結果が出なかったという問題です。そのため、科学研究の信頼性を高めるためのさまざまな改革が始まりました。
- 再現性の危機は科学が間違っているという意味ですか?
- そうではありません。むしろ科学が自らの誤りを見つけて正していく過程と見ることができます。再現研究、事前登録、データ公開といった改革によって、研究の信頼性を高める努力が続いています。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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