歴史
1849年、ドイツのアーノルト・ベルトルトは去勢した雄鶏に精巣を移植し直すと、とさかや鳴き声が戻ることを確かめ、精巣が血液中に何かを出していると推論しました。1889年にはフランスのシャルル=エドゥアール・ブラウン=セカールが72歳で動物の精巣抽出物を自ら注射し「若返った」と発表しましたが、プラセボ効果だった可能性が高いとされます。1935年、オランダのエルンスト・ラカーらが雄牛の精巣から結晶状のホルモンを分離して「テストステロン」と命名し、同年アドルフ・ブーテナントとレオポルト・ルジチカがそれぞれ化学合成に成功、1939年のノーベル化学賞を受けました。
体内での働き
テストステロンは思春期の声変わり、ひげ、筋肉や骨の成長を促し、大人になってからは筋肉量、骨密度、性欲、赤血球の産生、意欲を保ちます。皮脂の分泌を増やすためにきびと関係し、毛包でDHTに変わると男性型脱毛症(AGA)を起こします。女性も卵巣や副腎で男性の10〜20分の1ほどをつくり、性欲や筋肉の維持に使い、一部はエストロゲンに変わります。男性では30代以降に年約1%ずつ減り、疲労感、性欲低下、筋力低下、気分の落ち込みが重なる場合は男性更年期障害(LOH症候群)が疑われます。
補充療法と生活習慣
血中濃度が繰り返し低く症状もある場合、医師は注射やジェルによるテストステロン補充を検討します。2016年の米国「テストステロン試験(TTrials)」では性機能や気分がやや改善しましたが、効果は大きくありませんでした。赤血球の増えすぎ、睡眠時無呼吸の悪化、不妊などの副作用があるため、症状のない人への「元気づけ」目的の処方は勧められません。筋トレ、7時間以上の睡眠、内臓脂肪を減らすことが値の維持に役立ち、慢性ストレスでコルチゾールが高いとテストステロンが下がることがあります。加齢に伴うサルコペニアや骨粗しょう症の予防にも運動は重要です。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- テストステロンを増やす食べ物はありますか?
- 牡蠣や牛肉(亜鉛)、卵や青魚(ビタミンD)は不足を防ぐのに役立ちますが、特定の食品だけで正常値を大きく上げることはできません。運動・睡眠・体重管理のほうが効果的です。
- テストステロンの検査はいつ受けるべきですか?
- 値は朝に最も高いため、通常は午前中の空腹時に測定し、低ければ別の日にもう一度確認します。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- David, K., Dingemanse, E., Freud, J., & Laqueur, E. (1935). Über krystallinisches männliches Hormon aus Hoden (Testosteron). Hoppe-Seyler's Zeitschrift für physiologische Chemie, 233, 281–283.
- Bhasin, S., et al. (2018). Testosterone therapy in men with hypogonadism: an Endocrine Society clinical practice guideline. JCEM, 103(5), 1715–1744.
- Snyder, P. J., et al. (2016). Effects of testosterone treatment in older men. NEJM, 374(7), 611–624.
