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ツーレベル・ゲーム理論

🏛️ 政治・行政学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ツーレベル・ゲーム理論は、国際交渉において政府代表が外国政府と交渉すると同時に、国内の議会、利益団体、世論の批准を得なければならない二つのレベルのゲームを並行して行うとする理論です。ロバート・パットナムが1988年に提示しました。
目次
  1. 1. 二つのレベルのゲーム
  2. 2. ウィンセットと交渉力の逆説
  3. 3. 発展と批判
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

二つのレベルのゲーム

政治学者パットナムは1988年の論文「外交と国内政治:ツーレベル・ゲームの論理」で、国際政治と国内政治を切り離して見てきた従来の研究を批判しました。1978年のボン・サミットを事例に、首脳は国際交渉の場(レベルI)で相手国と暫定合意をつくり、それを国内(レベルII)で議会、官僚、利益団体、有権者に批准してもらわなければならないと説明しました。交渉者は二つのテーブルを同時に見ながら、一方での動きが他方に与える影響を計算します。ここでの「批准」は正式な議会承認だけでなく、国内アクターの実質的な受容全体を指します。この理論は、グレヴィッチ(1978年)の「逆第二イメージ」論のように国内と国際の相互作用を体系的に扱おうとする流れを代表しています。

ウィンセットと交渉力の逆説

中心概念は「ウィンセット」、すなわち国内で批准されうるレベルIの合意の集合です。両国のウィンセットが重なって初めて合意が可能になり、ウィンセットが大きいほど合意の可能性は高まります。その大きさは国内利益の分布と連合、批准制度(例:米上院の3分の2の承認)、交渉者の戦略によって決まります。興味深い逆説は、国内制約でウィンセットが狭い側がむしろ交渉力を持つことです。「議会はこれ以上通さない」という主張が信頼されれば相手が譲歩せざるをえないからです。これはシェリング(1960年)が『紛争の戦略』で述べた、手を縛られた側が有利になりうるという洞察と同じで、「シェリング推測」と呼ばれます。ゲーム理論的には、交渉者は相手国内の反対派と連携したり、見返りで相手のウィンセットを広げたりする戦略も使います。

発展と批判

エヴァンズ、ジェイコブソン、パットナム(1993年)の『両刃の外交』は貿易、安全保障、通貨交渉など11事例に理論を適用しました。飯田敬輔(1993年)とタラール(2001年)は不完全情報下では狭いウィンセットの利点が小さくなりうることを形式モデルで示し、モ・ジョンリン(1995年)は交渉者に拒否権があるかどうかで結果が変わると分析しました。ミルナー(1997年)は分割政府ほど協力が難しくなるとし、フィアロン(1994年)の「観衆費用」理論も国内政治が危機行動を左右する点でつながります。日本では日米貿易摩擦やTPP交渉の分析に用いられてきました。批判者は、この理論が厳密な予測理論というより分析的な比喩に近く、国家利益や選好を固定的に扱う限界があると指摘します(モラフチーク、1993年)。

よくある質問

ツーレベル・ゲーム理論を簡単に言うと?
外交官は相手国と交渉しながら自国の議会や国民も説得しなければならず、二つの交渉を同時に行っているという理論です。
国内の反対が強いとなぜ交渉に有利になりうるのですか?
「これ以上譲歩すれば国内で通らない」という主張が信頼されれば、相手国が譲歩せざるをえないからです。これをシェリング推測といいます。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Putnam, R. D. (1988). Diplomacy and domestic politics: The logic of two-level games. International Organization, 42(3), 427–460.
  2. Evans, P. B., Jacobson, H. K., & Putnam, R. D. (Eds.). (1993). Double-Edged Diplomacy: International Bargaining and Domestic Politics. Berkeley: University of California Press.
  3. Schelling, T. C. (1960). The Strategy of Conflict. Cambridge, MA: Harvard University Press.
  4. Milner, H. V. (1997). Interests, Institutions, and Information: Domestic Politics and International Relations. Princeton: Princeton University Press.
  5. Moravcsik, A. (1993). Introduction: Integrating international and domestic theories of international bargaining. In Evans et al. (Eds.), Double-Edged Diplomacy (pp. 3–42).
  6. Iida, K. (1993). When and how do domestic constraints matter? Journal of Conflict Resolution, 37(3), 403–426.
  7. Tarar, A. (2001). International bargaining with two-sided domestic constraints. Journal of Conflict Resolution, 45(3), 320–340.
  8. Mo, J. (1995). Domestic institutions and international bargaining: The role of agent veto in two-level games. American Political Science Review, 89(4), 914–924.
  9. Fearon, J. D. (1994). Domestic political audiences and the escalation of international disputes. American Political Science Review, 88(3), 577–592.
  10. Gourevitch, P. (1978). The second image reversed. International Organization, 32(4), 881–912.
  11. Pahre, R. (Ed.). (2006). Democratic Foreign Policy Making: Problems of Divided Government and International Cooperation. New York: Palgrave Macmillan.
  12. Da Conceição-Heldt, E., & Mello, P. A. (2017). Two-level games in foreign policy analysis. In Oxford Research Encyclopedia of Politics. Oxford: Oxford University Press.
  13. Bueno de Mesquita, B., Smith, A., Siverson, R. M., & Morrow, J. D. (2003). The Logic of Political Survival. Cambridge, MA: MIT Press.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。