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勝者の呪い

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
勝者の呪いとは、米石油会社アトランティック・リッチフィールドの技術者ケイペン、クラップ、キャンベルが1971年の海洋石油鉱区入札の分析で名づけた現象で、実際の価値は誰にとっても同じだが不確かな対象をオークションにかけると、最も楽観的に見積もった者が落札するため、勝者は実際の価値より多く支払ったり期待より低い収益しか得られなかったりしやすいという概念です。
目次
  1. 1. 起源と論理
  2. 2. 実験とフィールドの証拠
  3. 3. 応用と行動モデル
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

起源と論理

ケイペン、クラップ、キャンベル(1971年)は、1950〜60年代のメキシコ湾海洋鉱区の入札で、石油会社が落札した鉱区の収益率が期待を大きく下回ったと指摘しました。埋蔵量のように誰にとっても価値は同じでも、各自は推定値しか持たない「共通価値」の対象では、個々の推定が平均的には正確でも、最も高く見積もった者が勝つため、落札者の推定は系統的に過大になります。つまり「勝った」という事実そのものが、自分が価値を高く見すぎていたという悪い知らせなのです。ウィルソン(1969年)はこうした情報構造のオークションを初めてモデル化し、ミルグロムとウェーバー(1982年)は、合理的な入札者なら勝利を条件とする期待価値を計算して入札額を下げるべきだという理論を確立しました。これは逆選択の一形態とみなせます。

実験とフィールドの証拠

ベイザーマンとサミュエルソン(1983年)は、硬貨の入った瓶をオークションにかける授業実験で、落札額の平均が実際の価値を大きく上回ったと報告しました。ケーゲルとレヴィン(1986年)は統制された実験で、経験の浅い入札者が繰り返し損失を出し、入札者が増えるほどむしろ強気に入札する傾向を確認しました。サミュエルソンとベイザーマン(1985年)は、企業買収の交渉課題でも同じ誤りが現れることを示しました。一方、ヘンドリックス、ポーター、ブドロー(1987年)は実際の海洋鉱区入札データを分析し、プロの入札者はおおむね呪いを避けていたと報告しています。セイラー(1988年)とケーゲルとレヴィン(2002年)はこうした証拠を総合しました。

応用と行動モデル

ロール(1986年)は、企業買収で買い手が対象企業の価値を過大評価してプレミアムを払いすぎるという「傲慢仮説」を提示し、勝者の呪いを自信過剰と結びつけました。マッシーとセイラー(2013年)は、NFLのドラフトで上位指名権がそのコストに比べて価値が低いという「敗者の呪い」を報告しました。理論面では、アイスターとラビン(2005年)が、人々は他の入札者の行動に含まれる情報を十分に推論できないと仮定する「呪われた均衡」を提案しました。クレンペラー(2004年)は、周波数オークションの設計で勝者の呪いを和らげる工夫が重要であることを論じました。

よくある質問

勝者の呪いを簡単に言うと?
価値がはっきりしないものを大勢で競り合って買うと、いちばん高い値をつけた人が勝つので、勝者は実は高すぎる値段で買ってしまっている可能性が高いということです。
専門家も勝者の呪いに陥りますか?
実験では経験の浅い参加者にはっきり現れますが、実際の鉱区入札のように経験豊富なプロの入札者は入札額を下げて、かなりの程度避けているという研究もあります。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Capen, E. C., Clapp, R. V., & Campbell, W. M. (1971). Competitive bidding in high-risk situations. Journal of Petroleum Technology, 23(6), 641–653.
  2. Wilson, R. B. (1969). Competitive bidding with disparate information. Management Science, 15(7), 446–448.
  3. Milgrom, P. R., & Weber, R. J. (1982). A theory of auctions and competitive bidding. Econometrica, 50(5), 1089–1122.
  4. Bazerman, M. H., & Samuelson, W. F. (1983). I won the auction but don't want the prize. Journal of Conflict Resolution, 27(4), 618–634.
  5. Kagel, J. H., & Levin, D. (1986). The winner's curse and public information in common value auctions. American Economic Review, 76(5), 894–920.
  6. Roll, R. (1986). The hubris hypothesis of corporate takeovers. Journal of Business, 59(2), 197–216.
  7. Thaler, R. H. (1988). Anomalies: The winner's curse. Journal of Economic Perspectives, 2(1), 191–202.
  8. Samuelson, W. F., & Bazerman, M. H. (1985). The winner's curse in bilateral negotiations. In V. L. Smith (Ed.), Research in Experimental Economics (Vol. 3, pp. 105–137). Greenwich, CT: JAI Press.
  9. Hendricks, K., Porter, R. H., & Boudreau, B. (1987). Information, returns, and bidding behavior in OCS auctions: 1954–1969. Journal of Industrial Economics, 35(4), 517–542.
  10. Kagel, J. H., & Levin, D. (2002). Common Value Auctions and the Winner's Curse. Princeton, NJ: Princeton University Press.
  11. Eyster, E., & Rabin, M. (2005). Cursed equilibrium. Econometrica, 73(5), 1623–1672.
  12. Massey, C., & Thaler, R. H. (2013). The loser's curse: Decision making and market efficiency in the National Football League draft. Management Science, 59(7), 1479–1495.
  13. Klemperer, P. (2004). Auctions: Theory and Practice. Princeton, NJ: Princeton University Press.

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。