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アビリーンのパラドックス

🧠 心理学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
アビリーンのパラドックスとは、組織行動学者ジェリー・B・ハーヴィーが1974年に提示した概念で、集団のメンバー全員が本当は望んでいない決定について、ほかの人は望んでいるはずだと誤って推測し、誰も反対しないまま、結局誰も望まなかった行動をそろってとってしまう現象を指します。対立をうまく扱えないからではなく、「合意」をうまく扱えないことから生じる問題である点で、パラドックスと呼ばれます。
目次
  1. 1. アビリーン行きの逸話と概念
  2. 2. 多元的無知と関連する概念
  3. 3. 集団浅慮との違いと組織研究
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

アビリーン行きの逸話と概念

ハーヴィー(1974年)は、うだるように暑い夏の日、テキサスの妻の実家で義父がアビリーンまで夕食に行こうと提案したとき、妻も義母もハーヴィー自身も気が進まないのに、ほかの人は行きたがっていると思って賛成した経験を紹介しています。エアコンのない車で往復170キロ以上を走り、まずい食事をして帰ってきてから、4人とも最初から行きたくなかったことが明らかになりました。ハーヴィー(1988年)は、組織がしばしば直面するのは意見の対立ではなく、メンバーが個人的には同意している解決策を互いに伝えられない「合意のマネジメントの失敗」だと考え、その原因として、反対意見を述べると疎外されるのではないかという恐れを挙げました。

多元的無知と関連する概念

アビリーンのパラドックスの心理的な土台は、オールポート(1924年)とカッツ、オールポート(1931年)が最初に取り上げた「多元的無知」です。人々は自分ではある規範をひそかに拒否しながら、ほかの人はそれを支持していると誤って信じます。ミラーとマクファーランド(1987年)は、同じ行動を見ても自分と他人の動機を異なって解釈する傾向を示し、プレンティスとミラー(1993年)は、大学生が自分よりも仲間のほうが飲酒を気楽に受け入れていると過大評価していることを示しました。クラン(1995年)は、社会的な圧力のもとで本当の選好を隠す「選好の偽装」が世論をゆがめると分析し、ノエル=ノイマン(1974年)の「沈黙の螺旋」理論も、少数派に見られることを恐れて意見を隠す過程を説明しています。アッシュ(1951年)の同調実験も、集団の圧力が判断の表明に与える影響を示しています。

集団浅慮との違いと組織研究

ジャニス(1972年)の集団浅慮(グループシンク)が、結束の強い集団が実際にひとつの意見にのみ込まれて批判的思考を失う現象であるのに対し、アビリーンのパラドックスは、メンバーが内心では反対しながら表向きだけ同意している点で異なります。ステイサーとタイタス(1985年)は、集団での話し合いがメンバーが共有している情報に偏り、一部の人しか知らない情報はあまり共有されないことを示しました。モリソンとミリケン(2000年)は、メンバーが問題に気づきながらも口に出さない「組織の沈黙」を概念化し、エドモンドソン(1999年)は、反対意見を述べても不利益を受けないと信じられる「心理的安全性」がチームの学習を高めると報告しています。

よくある質問

アビリーンのパラドックスを簡単に言うと?
全員が内心では嫌がっているのに、ほかの人は望んでいると思い込んで誰も反対せず、結局誰も望んでいなかった決定にそろって従ってしまう現象です。
集団浅慮とはどう違いますか?
集団浅慮はメンバーが実際にひとつの意見に流されて批判をやめてしまうことで、アビリーンのパラドックスは内心では皆が反対しながら表向きだけ同意していることです。根本の原因は、互いの本音を知らないことにあります。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Harvey, J. B. (1974). The Abilene paradox: The management of agreement. Organizational Dynamics, 3(1), 63–80.
  2. Harvey, J. B. (1988). The Abilene Paradox and Other Meditations on Management. Lexington, MA: Lexington Books.
  3. Allport, F. H. (1924). Social Psychology. Boston: Houghton Mifflin.
  4. Katz, D., & Allport, F. H. (1931). Students' Attitudes: A Report of the Syracuse University Reaction Study. Syracuse, NY: Craftsman Press.
  5. Asch, S. E. (1951). Effects of group pressure upon the modification and distortion of judgments. In H. Guetzkow (Ed.), Groups, Leadership and Men (pp. 177–190). Pittsburgh: Carnegie Press.
  6. Janis, I. L. (1972). Victims of Groupthink. Boston: Houghton Mifflin.
  7. Noelle-Neumann, E. (1974). The spiral of silence: A theory of public opinion. Journal of Communication, 24(2), 43–51.
  8. Miller, D. T., & McFarland, C. (1987). Pluralistic ignorance: When similarity is interpreted as dissimilarity. Journal of Personality and Social Psychology, 53(2), 298–305.
  9. Prentice, D. A., & Miller, D. T. (1993). Pluralistic ignorance and alcohol use on campus. Journal of Personality and Social Psychology, 64(2), 243–256.
  10. Kuran, T. (1995). Private Truths, Public Lies: The Social Consequences of Preference Falsification. Cambridge, MA: Harvard University Press.
  11. Stasser, G., & Titus, W. (1985). Pooling of unshared information in group decision making. Journal of Personality and Social Psychology, 48(6), 1467–1478.
  12. Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
  13. Morrison, E. W., & Milliken, F. J. (2000). Organizational silence: A barrier to change and development in a pluralistic world. Academy of Management Review, 25(4), 706–725.

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。