起源とゲームの構造
ラッセル(1959年)は、1950年代の若者たちの危険な度胸試しを例に挙げ、米ソの核対立を「瀬戸際政策」というチキンゲームになぞらえました。ラポポートとチャマー(1966年)はこれを2×2ゲームとして定式化しています。一方がよけ、他方が直進する2つの結果はそれぞれナッシュ均衡であり、双方が直進すると最悪の衝突が起こります。鹿狩りゲームが信頼の問題だとすれば、チキンゲームはどちらが譲るかをめぐる対立の問題です。双方が確率的に行動を選ぶ混合戦略均衡では、一定の確率で衝突が起こります。
コミットメントと瀬戸際戦術
シェリング(1960年、1966年)は、このゲームでは先に自分の選択肢をなくした側が勝つと考えました。ハンドルを引き抜いて窓の外に投げ捨てるように、後戻りできないコミットメントを示せば、相手はよけるしかないというわけです。彼はまた、事態が制御不能になるリスクをあえて残しておく「偶然に委ねる脅し」の重要性も強調しました。カーン(1965年)は危機の高まりの段階を「エスカレーションの梯子」として整理しています。パウエル(1990年)はこうしたリスク負担の競争を核抑止の信憑性の問題として分析し、フィアロン(1994年)は、指導者が引き下がったときに国内で払う観衆費用が、コミットメントを信じさせる仕組みになると説明しました。
国際政治と生物学への応用
スナイダー(1971年)とスナイダー、ディーシング(1977年)は、キューバ危機をはじめとする多くの国際危機を、チキンゲームと囚人のジレンマの構造から比較分析し、ブラムズ(1985年)は超大国の対決に応用しました。生物学では、メイナード=スミスとプライス(1973年)が同じ構造をもつ「タカ・ハトゲーム」で動物の争いを分析し、進化的に安定な戦略という概念を提示しました。オーマン(1974年)は、信号機のような共通のシグナルに従って行動を調整する「相関均衡」が衝突のリスクをなくし、双方に混合戦略よりよい結果をもたらしうることを示しました。企業間の価格競争や消耗戦も、しばしばチキンゲームと呼ばれます。
よくある質問
- チキンゲームを簡単に言うと?
- 双方が引かずに張り合い、先に譲ったほうが負けになる状況です。両者が最後まで譲らなければともに大きな損害を受けるため、危険な対決になります。
- チキンゲームに勝つ戦略はありますか?
- シェリングは、後戻りできないコミットメントによって「絶対によけない」と相手に信じさせた側が有利になると考えました。ただし双方が同じことをすれば衝突しかねず、非常に危険です。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Russell, B. (1959). Common Sense and Nuclear Warfare. London: George Allen & Unwin.
- Schelling, T. C. (1960). The Strategy of Conflict. Cambridge, MA: Harvard University Press.
- Schelling, T. C. (1966). Arms and Influence. New Haven, CT: Yale University Press.
- Rapoport, A., & Chammah, A. M. (1966). The game of chicken. American Behavioral Scientist, 10(3), 10–28.
- Kahn, H. (1965). On Escalation: Metaphors and Scenarios. New York: Praeger.
- Snyder, G. H. (1971). 'Prisoner's dilemma' and 'chicken' models in international politics. International Studies Quarterly, 15(1), 66–103.
- Snyder, G. H., & Diesing, P. (1977). Conflict Among Nations: Bargaining, Decision Making, and System Structure in International Crises. Princeton, NJ: Princeton University Press.
- Maynard Smith, J., & Price, G. R. (1973). The logic of animal conflict. Nature, 246(5427), 15–18.
- Brams, S. J. (1985). Superpower Games: Applying Game Theory to Superpower Conflict. New Haven, CT: Yale University Press.
- Aumann, R. J. (1974). Subjectivity and correlation in randomized strategies. Journal of Mathematical Economics, 1(1), 67–96.
- Fearon, J. D. (1994). Domestic political audiences and the escalation of international disputes. American Political Science Review, 88(3), 577–592.
- Powell, R. (1990). Nuclear Deterrence Theory: The Search for Credibility. Cambridge: Cambridge University Press.
