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ドルオークション

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
ドルオークションとは、経済学者マーティン・シュービックが1971年に紹介したゲームで、1ドル札を最高額の入札者に売る一方、2位の入札者も自分の入札額を支払わなければならないというルールを設けます。このルールのため参加者は損失を減らそうと値を上げ続け、1ドルをはるかに超える金額を払ってしまいがちで、対立のエスカレーションと非合理的なのめり込みを示す代表例となっています。
目次
  1. 1. ゲームのルールとエスカレーションの論理
  2. 2. ゲーム理論による分析
  3. 3. コミットメントの拡大と行動研究
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

ゲームのルールとエスカレーションの論理

シュービック(1971年)のドルオークションでは、入札は5セント刻みで上がり、落札者は1ドルを受け取りますが、1位と2位の両方が最後の入札額を支払います。最初は安く1ドルを手に入れるチャンスに見えますが、2位にとどまるとその金額をまるごと失うため、少しだけ上乗せして1位になろうとする誘因が生じ続けます。入札が1ドルを超えたあとも、2位の側は「もう少し払って損失を小さくしよう」と考えるため、エスカレーションが続きます。シュービックは、カクテルパーティーでの実験でこのオークションがしばしば3〜5ドルまで跳ね上がったと報告しています。

ゲーム理論による分析

オニール(1986年)は、予算の上限が決まっていて全員がそれを知っている場合、後ろ向き帰納法で解くと最初の入札者が適切な額を1回だけ入札して終わる均衡が存在することを示し、これを国際紛争のエスカレーションのモデルとして解釈しました。ライニンガー(1989年)は、この均衡が予算の大きさに敏感に左右されることや協力の可能性を分析しています。オークション理論では、ドルオークションは全員が入札額を支払う「全員支払いオークション」の変形とみなせます。ベイ、コヴェノック、デ・フリース(1996年)は、完全情報の全員支払いオークションの均衡でレントが完全に消散しうることを示しました。消耗戦ゲームとも構造が似ています。

コミットメントの拡大と行動研究

テガー(1980年)は、実験参加者がエスカレーションを続ける理由を、当初の経済的動機から、体面や相手に勝ちたいという競争的動機へと移っていく過程として説明しました。ストー(1976年)のコミットメントの拡大の研究、アークスとブルーマー(1985年)のサンクコストの実験、ブロックナーとルービン(1985年)の「わな」の研究も、すでに投じた資源がさらなる投資を呼び込む心理を示しています。ベイザーマンとニール(1992年)は、MBAの授業で20ドル札のオークションが数百ドルにまで上がった例を紹介し、マーニガン(2002年)も極端なエスカレーションの事例を報告しました。近年では、入札のたびに手数料を払うペニーオークションについて、プラット、プライス、タッペン(2013年)とオーゲンブリック(2016年)が、リスク選好とサンクコストの誤謬の役割を分析しています。

よくある質問

ドルオークションを簡単に言うと?
1ドルを競売にかけますが、2位の人も自分の入札額を払わなければならないゲームです。負けるとお金を失うだけなので値を上げ続け、結局1ドルよりはるかに多く払ってしまいがちです。
なぜ人は1ドル以上を入札するのですか?
2位で終わると払ったお金をすべて失うため、少し上乗せして勝つほうが損失が小さく見えるからです。時間がたつと、体面や相手に勝ちたい気持ちも加わってエスカレーションが続きます。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Shubik, M. (1971). The dollar auction game: A paradox in noncooperative behavior and escalation. Journal of Conflict Resolution, 15(1), 109–111.
  2. Teger, A. I. (1980). Too Much Invested to Quit. New York: Pergamon Press.
  3. O'Neill, B. (1986). International escalation and the dollar auction. Journal of Conflict Resolution, 30(1), 33–50.
  4. Leininger, W. (1989). Escalation and cooperation in conflict situations: The dollar auction revisited. Journal of Conflict Resolution, 33(2), 231–254.
  5. Staw, B. M. (1976). Knee-deep in the big muddy: A study of escalating commitment to a chosen course of action. Organizational Behavior and Human Performance, 16(1), 27–44.
  6. Arkes, H. R., & Blumer, C. (1985). The psychology of sunk cost. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 35(1), 124–140.
  7. Brockner, J., & Rubin, J. Z. (1985). Entrapment in Escalating Conflicts: A Social Psychological Analysis. New York: Springer.
  8. Bazerman, M. H., & Neale, M. A. (1992). Negotiating Rationally. New York: Free Press.
  9. Murnighan, J. K. (2002). A very extreme case of the dollar auction. Journal of Management Education, 26(1), 56–69.
  10. Baye, M. R., Kovenock, D., & de Vries, C. G. (1996). The all-pay auction with complete information. Economic Theory, 8(2), 291–305.
  11. Platt, B. C., Price, J., & Tappen, H. (2013). The role of risk preferences in pay-to-bid auctions. Management Science, 59(9), 2117–2134.
  12. Augenblick, N. (2016). The sunk-cost fallacy in penny auctions. Review of Economic Studies, 83(1), 58–86.

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。