ゲームのルールとエスカレーションの論理
シュービック(1971年)のドルオークションでは、入札は5セント刻みで上がり、落札者は1ドルを受け取りますが、1位と2位の両方が最後の入札額を支払います。最初は安く1ドルを手に入れるチャンスに見えますが、2位にとどまるとその金額をまるごと失うため、少しだけ上乗せして1位になろうとする誘因が生じ続けます。入札が1ドルを超えたあとも、2位の側は「もう少し払って損失を小さくしよう」と考えるため、エスカレーションが続きます。シュービックは、カクテルパーティーでの実験でこのオークションがしばしば3〜5ドルまで跳ね上がったと報告しています。
ゲーム理論による分析
オニール(1986年)は、予算の上限が決まっていて全員がそれを知っている場合、後ろ向き帰納法で解くと最初の入札者が適切な額を1回だけ入札して終わる均衡が存在することを示し、これを国際紛争のエスカレーションのモデルとして解釈しました。ライニンガー(1989年)は、この均衡が予算の大きさに敏感に左右されることや協力の可能性を分析しています。オークション理論では、ドルオークションは全員が入札額を支払う「全員支払いオークション」の変形とみなせます。ベイ、コヴェノック、デ・フリース(1996年)は、完全情報の全員支払いオークションの均衡でレントが完全に消散しうることを示しました。消耗戦ゲームとも構造が似ています。
コミットメントの拡大と行動研究
テガー(1980年)は、実験参加者がエスカレーションを続ける理由を、当初の経済的動機から、体面や相手に勝ちたいという競争的動機へと移っていく過程として説明しました。ストー(1976年)のコミットメントの拡大の研究、アークスとブルーマー(1985年)のサンクコストの実験、ブロックナーとルービン(1985年)の「わな」の研究も、すでに投じた資源がさらなる投資を呼び込む心理を示しています。ベイザーマンとニール(1992年)は、MBAの授業で20ドル札のオークションが数百ドルにまで上がった例を紹介し、マーニガン(2002年)も極端なエスカレーションの事例を報告しました。近年では、入札のたびに手数料を払うペニーオークションについて、プラット、プライス、タッペン(2013年)とオーゲンブリック(2016年)が、リスク選好とサンクコストの誤謬の役割を分析しています。
よくある質問
- ドルオークションを簡単に言うと?
- 1ドルを競売にかけますが、2位の人も自分の入札額を払わなければならないゲームです。負けるとお金を失うだけなので値を上げ続け、結局1ドルよりはるかに多く払ってしまいがちです。
- なぜ人は1ドル以上を入札するのですか?
- 2位で終わると払ったお金をすべて失うため、少し上乗せして勝つほうが損失が小さく見えるからです。時間がたつと、体面や相手に勝ちたい気持ちも加わってエスカレーションが続きます。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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