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エルスバーグのパラドックス

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
エルスバーグのパラドックスとは、ダニエル・エルスバーグが1961年に示した意思決定問題で、人々が確率の分かっている選択肢を確率の分からない選択肢よりも系統的に好む「曖昧性回避」のために、サヴェッジの主観的期待効用理論と整合しない選択をすることを示すものです。
目次
  1. 1. 壺の実験
  2. 2. リスクと曖昧性
  3. 3. 曖昧性回避の理論
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

壺の実験

エルスバーグ(1961年)の代表的な例では、壺に赤い玉30個と、黒と黄色の玉が合わせて60個入っていますが、その比率は分かりません。多くの人は「赤に賭ける」を「黒に賭ける」より好み、同時に「黒か黄に賭ける」を「赤か黄に賭ける」より好みます。どのような単一の主観確率もこの2つの選好を同時に説明できないため、この選択はサヴェッジ(1954年)の確実性原理に違反します。どちらの選択も、確率が定まっている方を選ぼうとする傾向を示しています。

リスクと曖昧性

このパラドックスは、ナイト(1921年)が区別した測定可能なリスクと測定不可能な不確実性、そしてケインズ(1921年)のいう証拠の「重み」の概念につながります。エルスバーグは確率情報が欠けた状況を「曖昧性」と呼び、人々はそれを避けようとすると考えました。ヒースとトヴェルスキー(1991年)は、自分がよく知っていると感じる分野ではむしろ曖昧な賭けを好むという「能力仮説」を、フォックスとトヴェルスキー(1995年)は、より明確な代替案と比べられるときに曖昧性回避が強まるという「比較無知仮説」を示しました。キャメラーとウェーバー(1992年)は初期の実験証拠を概観しました。

曖昧性回避の理論

ギルボアとシュマイドラー(1989年)は、可能な確率分布の集合のうち最悪の場合の期待効用を最大化するマックスミン期待効用モデルを提示しました。シュマイドラー(1989年)は非加法的確率である容量を用いるショケ期待効用を、クリバノフ、マリナッチ、ムケルジ(2005年)は分布についての2次の不確実性を扱う滑らかなモデルをつくりました。マッケローニ、マリナッチ、ルスティキーニ(2006年)の変分選好と、ハンセンとサージェント(2001年)の頑健制御は、マクロ経済学や金融にも応用されています。トラウトマンとファン・デ・カイレン(2015年)は曖昧性態度に関する実験証拠をまとめました。

よくある質問

エルスバーグのパラドックスを簡単に言うと?
五分五分と分かっている賭けと、確率がまったく分からない賭けがあれば、期待利益が同じでも人々は確率の分かる方を選びがちだということです。
アレのパラドックスとはどう違いますか?
アレのパラドックスは確率が分かっているリスク状況で確実性を過大評価する現象で、エルスバーグのパラドックスは確率そのものが分からない曖昧な状況を嫌う現象です。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Ellsberg, D. (1961). Risk, ambiguity, and the Savage axioms. Quarterly Journal of Economics, 75(4), 643–669.
  2. Knight, F. H. (1921). Risk, Uncertainty and Profit. Boston: Houghton Mifflin.
  3. Keynes, J. M. (1921). A Treatise on Probability. London: Macmillan.
  4. Savage, L. J. (1954). The Foundations of Statistics. New York: Wiley.
  5. Gilboa, I., & Schmeidler, D. (1989). Maxmin expected utility with non-unique prior. Journal of Mathematical Economics, 18(2), 141–153.
  6. Schmeidler, D. (1989). Subjective probability and expected utility without additivity. Econometrica, 57(3), 571–587.
  7. Klibanoff, P., Marinacci, M., & Mukerji, S. (2005). A smooth model of decision making under ambiguity. Econometrica, 73(6), 1849–1892.
  8. Maccheroni, F., Marinacci, M., & Rustichini, A. (2006). Ambiguity aversion, robustness, and the variational representation of preferences. Econometrica, 74(6), 1447–1498.
  9. Camerer, C., & Weber, M. (1992). Recent developments in modeling preferences: Uncertainty and ambiguity. Journal of Risk and Uncertainty, 5(4), 325–370.
  10. Heath, C., & Tversky, A. (1991). Preference and belief: Ambiguity and competence in choice under uncertainty. Journal of Risk and Uncertainty, 4(1), 5–28.
  11. Fox, C. R., & Tversky, A. (1995). Ambiguity aversion and comparative ignorance. Quarterly Journal of Economics, 110(3), 585–603.
  12. Hansen, L. P., & Sargent, T. J. (2001). Robust control and model uncertainty. American Economic Review, 91(2), 60–66.
  13. Trautmann, S. T., & van de Kuilen, G. (2015). Ambiguity attitudes. In G. Keren & G. Wu (Eds.), The Wiley Blackwell Handbook of Judgment and Decision Making (pp. 89–116). Chichester: Wiley.

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この記事は2026年10月27日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。