概要
印象形成とは、外見や話し方、いくつかの行動や特性といった断片的な情報から、その人についての全体的な判断をつくりあげる過程です。1946年のソロモン・アッシュの研究以来、人は情報を単純に足し合わせるのではなく意味のあるひとつの全体へとまとめあげること、そして情報が示される順序が印象に大きく影響することが繰り返し確かめられてきました。
アッシュの印象形成実験
- 中心特性:アッシュは「知的な、器用な、勤勉な、温かい、決断力のある、実際的な、用心深い」というリストと、「温かい」だけを「冷たい」に替えたリストを示しました。一語を替えただけで、寛大さ・ユーモア・幸福感など他の特性の評価が大きく変わりました。一方、「礼儀正しい/ぶっきらぼうな」のように替えても影響の小さい特性は周辺特性と呼ばれました。
- 順序効果:「知的な、勤勉な、衝動的な、批判的な、頑固な、嫉妬深い」のようなリストを逆順で示すと、肯定的な特性が先に来た方がはるかに好意的に評価されました。これが初頭効果です。
- 現場での再現:ケリー(1950)は実際の授業で、招いた講師を「温かい」人または「冷たい」人として紹介しました。同じ講義を聞いても、「温かい」と紹介された学生のほうが講師を好意的に評価し、討論にも多く参加しました。
初頭効果と新近効果
ラッチンスは「ジム」という人物が外向的にふるまう段落と内向的にふるまう段落を順序を替えて読ませ、先に読んだ段落の性格が全体の印象を支配することを示しました。ただし二つの情報のあいだに時間をあけたり別の課題をはさんだりすると、後の情報が強く効く新近効果が現れることもありました。アンダーソンは印象を各情報の加重平均とみなし、前の情報ほど重みが大きくなる現象を情報統合理論で説明しました。
- 注意の減衰:最初の情報には多くの注意を払い、後の情報はあまり丁寧に処理しません。
- 解釈の枠組み:最初の情報が枠組み(スキーマ)となり、後のあいまいな情報をそれに合わせて解釈します。これは確証バイアスともつながります。
- 一貫性の追求:すでにできた印象と食い違う情報は無視されたり例外扱いされたりしやすく、認知的不協和を避けようとする動機と関係します。
顔と短い接触による第一印象
ウィリスとトドロフ(2006)は、見知らぬ顔を100ミリ秒見せただけでも、魅力・好感・信頼性・有能さ・攻撃性の判断が時間制限なしの判断と高い相関を示すことを報告しました。提示時間を延ばすと判断への確信は高まりましたが、判断そのものはあまり変わりませんでした。外見や表情、声といった非言語的手がかりの影響はメラビアンの法則の議論ともつながりますが、速い判断が正確とは限らない点に注意が必要です。
活用と限界
- 面接・評価:面接の最初の数分の印象が全体の評価を左右しやすいため、構造化面接や評価基準表を使うと偏りを減らせます。
- ハロー効果:ひとつの好ましい特性が他の特性の評価まで引き上げる現象で、アッシュはこれを人をひとつのまとまった存在として捉えようとする試みと解釈しました。
- 第一印象を変える:一貫して繰り返される反対の情報と十分な接触時間があれば、第一印象も修正されえます。判断を保留し正確さを重視する動機をもつと初頭効果が弱まるという研究もあります。
参考文献
- Asch, S. E. (1946). Forming impressions of personality. Journal of Abnormal and Social Psychology, 41(3), 258–290.
- Kelley, H. H. (1950). The warm-cold variable in first impressions of persons. Journal of Personality, 18(4), 431–439.
- Luchins, A. S. (1957). Primacy-recency in impression formation. In C. I. Hovland (Ed.), The Order of Presentation in Persuasion (pp. 33–61). New Haven, CT: Yale University Press.
- Anderson, N. H. (1965). Primacy effects in personality impression formation using a generalized order effect paradigm. Journal of Personality and Social Psychology, 2(1), 1–9.
- Willis, J., & Todorov, A. (2006). First impressions: Making up your mind after a 100-ms exposure to a face. Psychological Science, 17(7), 592–598.