消費関数パズル
ケインズ(1936年)は消費が現在の可処分所得で決まり、所得が増えるほど所得に占める消費の割合である平均消費性向が下がると考えました。短期の家計データはこれを支持しましたが、クズネッツ(1946年)がまとめた1869年以降の米国の長期データでは、所得が数倍に増えても平均消費性向は約0.9でほぼ一定でした。この「消費関数パズル」を解くため、モディリアーニとブランバーグ(1954年)はライフサイクル仮説を、フリードマン(1957年)は恒常所得仮説を提示しました。両理論はいずれも消費者が現在だけでなく将来の所得も考慮して消費を平準化すると考えるため、まとめて「将来を見通した消費理論」と呼ばれます。
中心的内容
フリードマンは測定された所得Yを恒常所得Yᵖと変動所得Yᵗに分けました。恒常所得は能力、教育、資産などから期待される長期の平均所得であり、変動所得は宝くじの当選、一回限りのボーナス、一時的な失業のような予期しない変動です。消費はC = kYᵖとして恒常所得に比例し、変動所得の大部分は貯蓄されます。これでパズルが解けます。ある時点の横断面データでは、高所得世帯に一時的に所得が高い世帯が多く含まれるため平均消費性向が低く見えますが、長期の時系列では所得の増加の大部分が恒常所得の増加なので消費の割合は一定です。フリードマンは恒常所得を過去の所得の加重平均で推計し、この適応的期待の方法は後に合理的期待に置き換えられました。政策的には一時的な減税や給付金は消費をあまり増やさないという含意があります。
検証と発展
ホール(1978年)は合理的期待を組み合わせ、恒常所得仮説が正しければ消費は利用可能な情報では変化を予測できないランダムウォークに従うはずだと示しました。しかしフレイヴィン(1981年)、キャンベルとマンキュー(1989年)は消費が予測可能な所得変化に反応する「過剰反応」を発見し、キャンベルとマンキューは人口の約半分が現在の所得どおりに消費すると推計しました。ゼルデス(1989年)はその原因として流動性制約を指摘し、キャロル(1997年)は所得の不確実性のために人々が緩衝在庫的な貯蓄をするモデルを示しました。パーカーら(2013年)は2008年の米国の景気刺激給付金の約12〜30%が3か月以内に非耐久財に使われたことを示し、変動所得もかなり消費されることを確認しました。カプランとヴィオランテ(2014年)は、住宅のような非流動資産は多いが現金が少ない「裕福なその日暮らし世帯」がこうした反応を説明するとしました。
よくある質問
- 恒常所得仮説を簡単に言うと?
- 人々は今月の給料ではなく、これから安定して稼ぐと見込む平均所得に合わせて消費し、ボーナスのような一時的な収入は大部分を貯蓄するという理論です。
- ライフサイクル仮説とどう違いますか?
- どちらも将来所得を考慮して消費を平準化すると考えますが、ライフサイクル仮説は退職など人生の段階ごとの貯蓄を、恒常所得仮説は恒常所得と変動所得の区別を強調します。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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