言語の記号性
言語は形式(音声や文字)と内容(意味)が結びついた記号の体系です。ソシュールは『一般言語学講義』(1916)で、言語記号を聴覚映像であるシニフィアン(signifiant)と概念であるシニフィエ(signifié)の結合として説明しました。以下の特性の多くはこの記号性から生じます。
恣意性
恣意性とは、音と意味の間に必然的な関係がないという特性です。ソシュールは言語記号の第一原理に挙げました。
- 同じ動物を、韓国語では「ケ(개)」、英語では「dog」、日本語では「いぬ」と呼びます。
- 一つの音が複数の意味を持つ同音異義語(韓国語の「ペ(배)」:梨、腹、船)や、一つの意味を別の音で表す同義語があります。
- 時代とともに音や意味が変わっても(韓国語「オリダ(어리다)」:「愚かだ」→「幼い」)、言語として問題はありません。
- 擬音語・擬態語は音と意味がある程度似ていますが、鶏の鳴き声を日本語では「コケコッコー」、英語では「cock-a-doodle-doo」と表すように、完全な例外ではありません。
社会性
社会性とは、言語が社会の成員間の約束であるため、個人が勝手に変えたり新しくつくったりできないという特性で、不易性とも呼ばれます。恣意的に結ばれた音と意味の関係でも、いったん社会で定着すれば守らなければ意思疎通ができません。一人だけ「机」を「椅子」と呼べば、他の人には通じないのがその例です。新語も多くの人に受け入れられて使われて初めて言語になります。
歴史性
歴史性とは、言語が時間の流れとともに新しく生まれ、変化し、消えていくという特性で、可易性とも呼ばれます。
- 生成:「コンピューター」「ネチズン」のような新しい語が生まれます。
- 変化:中世韓国語の「オヨプダ(어엿브다)」(かわいそうだ)が「オヨプダ(어여쁘다)」(かわいい)へと意味が変わりました。
- 消滅:固有語の数詞「オン(온、百)」「チュムン(즈믄、千)」のような古語はほとんど使われなくなりました。
社会性はある時点で言語を勝手に変えられないことを、歴史性は長い時間をかけて社会全体が変えていくことを意味するので、両者は矛盾しません。
規則性と創造性
- 規則性:言語には音、語、文をつくる一定の規則(文法)があります。「私はご飯を食べた」は自然ですが、語順を崩した文は不自然です。サピアは、あらゆる言語が固有の形式体系を持つことを強調しました。
- 創造性(開放性):有限の音と規則から、聞いたことのない文を限りなくつくり、理解することができます。チョムスキーはこれを人間の言語能力の核心と見ました。
- 分節性:連続的な世界と音声を不連続な単位に区切って表します。虹の色は連続していますが、言語はそれを「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」のように分けて呼びます。
ホケットの設計特徴
ホケット(1960)は、人間の言語と動物のコミュニケーションを比較する13の設計特徴を提示しました。そのうち恣意性、離散性(分節性)、転位性(いま・ここにないものについて語る)、生産性(新しいメッセージをつくる)、文化的伝達(遺伝ではなく学習によって伝わる)、二重性(意味のない音が組み合わさって意味のある単位をつくる)は、人間の言語を際立たせる特徴です。ミツバチのダンスが餌の方向と距離を伝えるように一部の動物も転位性を示しますが、すべての特徴を備えているのは人間の言語だけだと考えました。子どもがこうした言語をどう身につけるかは言語発達理論で扱っています。
参考文献
- Saussure, F. de (1916). Cours de linguistique générale (C. Bally & A. Sechehaye, Eds.). Lausanne & Paris: Payot.
- Sapir, E. (1921). Language: An Introduction to the Study of Speech. New York: Harcourt, Brace.
- Hockett, C. F. (1960). The origin of speech. Scientific American, 203(3), 88–96.