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相対所得仮説

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
相対所得仮説は、人々の消費が自分の絶対的な所得水準だけでなく、周囲の人々と比べた相対的な所得の位置、そして過去に経験した最高の消費水準によって決まるとする消費理論です。ジェームズ・デューゼンベリーが1949年に提示しました。
目次
  1. 1. 背景と2つの効果
  2. 2. 消費関数パズルの解法
  3. 3. 現代的再評価
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

背景と2つの効果

ケインズ(1936年)の絶対所得仮説は、消費は現在の所得で決まり所得が増えるほど平均消費性向が下がると考えました。しかし長期データでは平均消費性向がほぼ一定で、「消費関数パズル」が生じました。デューゼンベリー(1949年)は『所得・貯蓄・消費者行動の理論』で消費の社会的性格に注目してこのパズルを説明しました。第一は「デモンストレーション効果」です。人々は周囲の人の消費を見てまねようとするので、消費は自分の絶対所得より準拠集団の中での相対的な所得の位置に左右されます。同じ所得でも裕福な地域に住む世帯はより多く消費します。これはヴェブレン(1899年)の顕示的消費の議論を受け継ぐものです。第二は「歯止め効果(ラチェット効果)」です。いったん高まった消費習慣は所得が減っても簡単には下がらず、消費は現在の所得だけでなく過去の最高所得にも依存します。

消費関数パズルの解法

デモンストレーション効果によれば、ある時点の横断面では所得分布上の高い位置にある世帯は比較の圧力を受けにくく平均消費性向が低くなりますが、全員の所得がともに上がる長期では相対的な位置が変わらないので消費の割合は一定に保たれます。歯止め効果は、景気後退期に所得が下がっても消費があまり減らず平均消費性向が一時的に上がる現象を説明し、景気の下降局面で消費が緩衝の役割を果たすという含意を与えます。この仮説はフリードマン(1957年)の恒常所得仮説、モディリアーニのライフサイクル仮説とともに消費関数パズルへの代表的な答えとして紹介されますが、合理的個人の最適化に基づく競合理論が主流となるにつれ、しばらく教科書の周辺へ押しやられました(メイソン、2000年)。

現代的再評価

相対所得の考え方は幸福の経済学と金融経済学で復活しました。イースタリン(1974年)は、一国の中では豊かな人ほど幸福だが、時間とともに国民所得が増えても平均的な幸福はあまり増えないという「イースタリンの逆説」を示しましたが、相対所得が幸福を左右するならこの現象を説明できます。ラットマー(2005年)は自分の所得を一定としても隣人の所得が上がると幸福が下がることを示し、クラーク、フライターズ、シールズ(2008年)は相対所得効果の膨大な証拠を整理しました。フランク(1985年、2005年)は家や車のように相対的な位置が重要な「地位財」をめぐる競争が互いに損失を与える地位の外部性を生むとして、累進消費税を提案しました。金融ではエイベル(1990年)の「ジョーンズ家に負けるな」型の選好や、キャンベルとコクラン(1999年)の習慣形成モデルが株式プレミアム・パズルの説明に用いられました。バートランドとモース(2016年)は上位所得が増えた地域で中間層の消費と負債が増える「トリクルダウン消費」を見出しました。これは相対的剥奪の研究ともつながっています。

よくある質問

相対所得仮説を簡単に言うと?
人々は自分の所得の額そのものより、周りの人と比べてどの程度かによって消費し、いったん上がった生活水準は所得が減ってもなかなか下げられないという理論です。
デモンストレーション効果と歯止め効果とは何ですか?
デモンストレーション効果は周りの人の消費を見てまねて消費する傾向、歯止め効果は所得が減っても過去の高い消費水準を簡単に下げられない傾向です。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Duesenberry, J. S. (1949). Income, Saving, and the Theory of Consumer Behavior. Cambridge, MA: Harvard University Press.
  2. Veblen, T. (1899). The Theory of the Leisure Class. New York: Macmillan.
  3. Keynes, J. M. (1936). The General Theory of Employment, Interest and Money. London: Macmillan.
  4. Friedman, M. (1957). A Theory of the Consumption Function. Princeton: Princeton University Press.
  5. Easterlin, R. A. (1974). Does economic growth improve the human lot? In P. A. David & M. W. Reder (Eds.), Nations and Households in Economic Growth (pp. 89–125). New York: Academic Press.
  6. Frank, R. H. (1985). Choosing the Right Pond: Human Behavior and the Quest for Status. New York: Oxford University Press.
  7. Frank, R. H. (2005). Positional externalities cause large and preventable welfare losses. American Economic Review, 95(2), 137–141.
  8. Abel, A. B. (1990). Asset prices under habit formation and catching up with the Joneses. American Economic Review, 80(2), 38–42.
  9. Campbell, J. Y., & Cochrane, J. H. (1999). By force of habit: A consumption-based explanation of aggregate stock market behavior. Journal of Political Economy, 107(2), 205–251.
  10. Luttmer, E. F. P. (2005). Neighbors as negatives: Relative earnings and well-being. Quarterly Journal of Economics, 120(3), 963–1002.
  11. Clark, A. E., Frijters, P., & Shields, M. A. (2008). Relative income, happiness, and utility. Journal of Economic Literature, 46(1), 95–144.
  12. Bertrand, M., & Morse, A. (2016). Trickle-down consumption. Review of Economics and Statistics, 98(5), 863–879.
  13. Mason, R. (2000). The social significance of consumption: James Duesenberry's contribution to consumer theory. Journal of Economic Issues, 34(3), 553–572.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。