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次善の理論

📈 経済学 執筆 CampusDown ウィキ編集部 最終更新
次善の理論とは、経済の効率性(パレート最適)に必要な条件のうち一つが取り除けない歪みのために満たされないとき、残りの条件をできるだけ満たすことがかえって厚生を下げうるという厚生経済学の一般定理です。リチャード・リプシーとケルヴィン・ランカスターが1956年に定式化しました。
目次
  1. 1. 起源と一般定理
  2. 2. 課税と価格政策への応用
  3. 3. 批判、拡張と現代的な含意
  4. 4. よくある質問
  5. 5. 参考文献

起源と一般定理

ヴァイナー(1950年)は、関税同盟は加盟国間の関税をなくしても、非加盟国からの効率的な輸入を加盟国からの輸入に置き換える「貿易転換」によって、かえって厚生を減らしうることを示しました。ミード(1955年)はこうした事例をより広い枠組みで扱いました。リプシーとランカスター(1956年)はこの直観を一般化し、パレート最適の条件の一つが満たせない制約があれば、達成可能な最善の状態(次善)では一般に他の条件も最適な値から外れなければならないという定理を証明しました。つまり、ある市場に歪みが残っているとき、ほかの市場の歪みを一つずつ取り除く「部分的な改革」が厚生を改善するとは保証できないということです。

課税と価格政策への応用

次善の考え方は公共経済学の中心的な結果とつながっています。ラムゼー(1927年)は、一定の税収を集める場合、すべての財に同じ税率をかけるよりも需要の非弾力的な財に高い税率をかけるほうが効率の損失が小さいことを示しましたが、これは歪みが避けられないときに最適な歪みの構造を探す次善の問題です。ボワトゥー(1956年)は、収支均衡の制約のある公企業の価格設定に同じ論理を応用しました。ダイアモンドとマーリーズ(1971年)は、適切な条件のもとでは次善の状況でも生産効率は維持するのが望ましいという重要な例外を証明しました。バグワティ(1971年)は、貿易理論におけるさまざまな歪みと政策の順位づけを整理しました。

批判、拡張と現代的な含意

デイビスとウィンストン(1965年)は、経済の部門間に分離可能性があれば部分的な改革にもなお意味がありうることを示しました。ン(1977年)は、情報や行政のコストのために次善の政策さえ実行が難しいという「第三善の理論」を示しました。ハモンド(1990年)は公共経済学の理論的進展を評価するなかでこの問題を扱い、リプシー(2007年)は定理の50周年にその意義を振り返っています。ロドリック(2008年)は、開発途上国では先進国の制度をそのまま移植するより、既存の歪みを考慮した「次善の制度」のほうが有効でありうると主張しました。ディキシット(1985年)は、開放経済の租税政策においてこの原理を体系化しました。こうした議論は公共選択論とともに政策評価の基本的な枠組みとなっています。

よくある質問

次善の理論を簡単に説明すると?
理想的な状態を実現できない状況では、理想的な条件を一つずつ満たしていくことが必ずしもより良い結果につながるとは限らない、という理論です。
代表的な例は何ですか?
関税同盟が一部の関税をなくしても、貿易転換のために厚生が下がりうるというヴァイナーの分析が代表的です。

出典確認日:2026-10-26

参考文献

  1. Lipsey, R. G., & Lancaster, K. (1956). The general theory of second best. Review of Economic Studies, 24(1), 11–32.
  2. Meade, J. E. (1955). Trade and Welfare. London: Oxford University Press.
  3. Viner, J. (1950). The Customs Union Issue. New York: Carnegie Endowment for International Peace.
  4. Ramsey, F. P. (1927). A contribution to the theory of taxation. Economic Journal, 37(145), 47–61.
  5. Davis, O. A., & Whinston, A. B. (1965). Welfare economics and the theory of second best. Review of Economic Studies, 32(1), 1–14.
  6. Diamond, P. A., & Mirrlees, J. A. (1971). Optimal taxation and public production I: Production efficiency. American Economic Review, 61(1), 8–27.
  7. Boiteux, M. (1956). Sur la gestion des monopoles publics astreints à l'équilibre budgétaire. Econometrica, 24(1), 22–40.
  8. Bhagwati, J. N. (1971). The generalized theory of distortions and welfare. In J. Bhagwati et al. (Eds.), Trade, Balance of Payments and Growth (pp. 69–90). Amsterdam: North-Holland.
  9. Ng, Y.-K. (1977). Towards a theory of third-best. Public Finance, 32(1), 1–15.
  10. Hammond, P. J. (1990). Theoretical progress in public economics: A provocative assessment. Oxford Economic Papers, 42(1), 6–33.
  11. Lipsey, R. G. (2007). Reflections on the general theory of second best at its golden jubilee. International Tax and Public Finance, 14(4), 349–364.
  12. Rodrik, D. (2008). Second-best institutions. American Economic Review, 98(2), 100–104.
  13. Dixit, A. (1985). Tax policy in open economies. In A. Auerbach & M. Feldstein (Eds.), Handbook of Public Economics (Vol. 1, pp. 313–374). Amsterdam: North-Holland.

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この記事は2026年10月26日に最終更新されました。内容は広く知られた原典と教科書に基づいて整理していますが、レポートで引用する際は参考文献の原典を必ず確認してください。