概要
未成熟―成熟理論は、アメリカの組織行動学者クリス・アージリスが1957年の著書『組織とパーソナリティー』(Personality and Organization)と同年の『アドミニストレイティブ・サイエンス・クォータリー』論文で示した理論です。個人のパーソナリティの発達と組織構造がかみ合わないことを指摘し、人間関係論の後に現れた人的資源アプローチの代表的理論とされます。
未成熟から成熟へ:7つの変化
アージリスは、人は子どもから大人へ成長するにつれて次の7つの方向に変化すると考えました。
- 受動的な状態 → 能動的な状態
- 依存 → 相対的な自立
- 少数の単純な行動 → 多様な行動
- 移り気で浅い関心 → 安定した深い関心
- 短い時間的展望 → 過去と未来を含む長い時間的展望
- 従属的な地位 → 対等または上位の地位
- 自己認識の欠如 → 自己認識と自己統制
これらは決まった段階ではなく連続体であり、各次元でどこまで到達しているかは人によって異なります。
公式組織と個人の対立
アージリスは、職務の専門化、命令系統、指揮の統一、統制範囲といった伝統的な公式組織の原理が、成員に受動的で依存的、短期的な展望しか持たないことを求めると考えました。つまり組織は成熟した大人を子どものように扱っているのです。成熟した人ほど、この不一致から欲求不満、失敗感、葛藤を強く感じます。
従業員の適応反応
- 組織を去る(欠勤・離職)、あるいは上位の地位に昇って統制から逃れようとする。
- 空想、攻撃、退行、投影などの防衛反応を示す。
- 仕事に無関心になり、金銭的報酬だけを重視する。
- 非公式集団をつくり、労働組合のように公式化して対抗する。
経営者はこれらの反応を怠惰とみなして統制を強めがちですが、そうすると対立がさらに深まる悪循環が生じます。
処方
アージリスは、成員により多くの責任と裁量を与える職務拡大、参加型・従業員中心のリーダーシップ、現実中心のリーダーシップを処方しました。1964年の『個人と組織の統合』では個人の心理的成功と組織の有効性をともに高める方法を論じ、その後ショーンとともにシングルループ学習とダブルループ学習を提唱して組織学習の研究へ進みました。
関連理論と批判
人はもともと仕事を通じて成長しようとするという前提は、マズローの自己実現欲求やマグレガーのY理論と同じ流れにあり、成員の成熟度に合わせてリーダーシップを変えるべきだとするハーシーとブランチャードの状況的リーダーシップにも影響を与えました。ただし、すべての人が成熟と自律を望むと前提して個人差や文化差を十分に考慮していないこと、単純な反復作業を好む人もいること、実証的検証が乏しいことが批判されています。
参考文献
- Argyris, C. (1957). Personality and Organization: The Conflict Between System and the Individual. New York: Harper & Brothers.
- Argyris, C. (1957). The individual and organization: Some problems of mutual adjustment. Administrative Science Quarterly, 2(1), 1–24.
- Argyris, C. (1964). Integrating the Individual and the Organization. New York: Wiley.
- Argyris, C., & Schön, D. A. (1978). Organizational Learning: A Theory of Action Perspective. Reading, MA: Addison-Wesley.