概要
アメリカMITの経営学者ダグラス・マグレガーは、1957年4月のMIT講演「企業の人間的側面」でX理論・Y理論を初めて示し、1960年に同名の著書で体系化しました。彼は、管理のやり方の根底には人間についての仮定があり、従来の管理は誤った人間観の上に立っていると批判しました。この理論は人間関係論以後の行動科学的管理論を代表するものです。
X理論の仮定
- 普通の人間は生来仕事が嫌いで、できれば避けようとします。
- そのため組織の目標を達成するには、強制、統制、命令、罰による脅しが必要です。
- 普通の人間は命令されることを好み、責任を避け、野心が少なく、何よりも安全を望みます。
X理論は科学的管理法のように、厳しい監督、細かな規則、経済的な報酬と罰に頼る管理につながります。マグレガーは、生理的欲求や安全欲求がすでに満たされた現代の労働者には、こうした管理の効果は薄いと考えました。
Y理論の仮定
- 仕事で心身を使うのは、遊びや休息と同じく自然なことです。
- 人は自ら同意した目標のためなら、自分で方向を定め自分を統制できます。
- 目標への献身は、達成に伴う報酬、とくに自己実現欲求の充足によって決まります。
- 適切な条件の下では、人は責任を引き受けるだけでなく自ら求めます。
- 問題解決に必要な想像力や創造性は少数ではなく多くの人に広く備わっていますが、現代の産業組織ではその潜在力の一部しか使われていません。
マズローの欲求理論との関係
マグレガーはマズローの欲求階層説をもとに、低次の欲求が満たされた人は社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求によって動かされると考えました。そのため、X理論的なアメとムチはすでに満たされた低次の欲求にしか訴えないので効果がなく、高次の欲求を満たす機会を与えるY理論的な管理が必要だと主張しました。この点で動機づけ理論の内容理論と直接つながります。
管理への応用
- 目標管理(MBO):メンバーが上司とともに目標を決め、自ら評価します。
- 分権化と権限委譲:意思決定の権限を下に移し、自律性を高めます。
- 職務拡大と参加型管理:仕事をより広く意味のあるものにし、意思決定に参加させます。
ハーシーとブランチャードの状況的リーダーシップのように、部下の成熟度に応じて指示型(X理論に近い)と委任型(Y理論に近い)の行動を使い分けるべきだとする理論とあわせて適用されることもあります。同じ頃、アージリス(1957)は未成熟―成熟理論で、官僚的組織が人の成熟を妨げると批判しました。
Z理論と批判
ウィリアム・オオウチは1981年の『セオリーZ』で、長期雇用、集団的意思決定、個人の責任を組み合わせた日本的経営の要素をアメリカ企業に取り入れたZ型組織を提案しました。X理論・Y理論に対しては、人間を二つの型にあまりに単純に分けており、Y理論が常により効果的だという実証的根拠が乏しいという批判があります。状況適合理論は、課業やメンバーの特性によって効果的な管理方式は異なると考えます。それでも、コペルマンら(2008)が管理者のX・Y仮定を測る尺度を開発したように、管理者の人間観が行動に影響するという中心的な洞察は今も研究されています。
関連項目: アージリスの未成熟―成熟理論
参考文献
- McGregor, D. (1957). The human side of enterprise. Management Review, 46(11), 22–28.
- McGregor, D. (1960). The Human Side of Enterprise. New York: McGraw-Hill.
- Ouchi, W. G. (1981). Theory Z: How American Business Can Meet the Japanese Challenge. Reading, MA: Addison-Wesley.
- Kopelman, R. E., Prottas, D. J., & Davis, A. L. (2008). Douglas McGregor's Theory X and Y: Toward a construct-valid measure. Journal of Managerial Issues, 20(2), 255–271.