調査目的による分類
社会調査はデータ収集の方法や時間の次元だけでなく、調査の目的によっても分類されます。セルティズら(1959)以降、社会調査法の教科書はおおむね探索的(exploratory)、記述的(descriptive)、説明的(explanatory)調査の三つに分けています。三類型は互いに排他的というより知識が積み重なっていく段階に近く、一つの研究が複数の目的をあわせ持つことも少なくありません。調査全体の流れは社会福祉調査の過程で扱っています。
探索的調査
研究テーマについての知識がほとんどないときに、問題を把握し今後の研究の方向や仮説を見つけるために行う調査です。「この現象で何が起きているのか」を問います。
- 目的:問題の定義、主要な変数の発見、仮説の形成、本調査の実行可能性の確認
- 方法:文献調査、専門家意見調査(経験者調査)、少数事例への深層面接、フォーカスグループ、現地観察、予備調査(パイロット調査)
- 特徴:手続きが柔軟で標本が小さく、質的データを多く用います。結果の一般化は困難です。
- 例:新たに現れた青少年のオンライン賭博問題の実態と原因を知るため、相談現場の実務者と当事者にインタビューする調査
記述的調査
現象の特性、分布、変数間の関係を正確に描き出す調査です。「どれだけ、誰が、どのように」を問います。
- 目的:実態把握、頻度と比率の推定、変数間の相関関係の記述
- 方法:代表性のある標本による質問紙調査、国勢調査、横断調査とトレンド・パネルなどの縦断調査、既存統計の分析
- 特徴:標本の代表性と測定の正確さが重要で、調査前に何を測るかが明確でなければなりません。相関関係は示せても因果関係は断定できません。
- 例:全国の家出青少年の規模、年齢・性別の分布、家出期間と生活実態を把握する調査、地域の高齢者の福祉サービス利用率調査
説明的調査
現象がなぜ起きるのか、変数の間に因果関係があるのかを明らかにする調査です。「なぜそうなのか」を問います。
- 目的:仮説の検証、原因の解明、結果の予測、プログラム効果の評価
- 方法:実験計画と準実験計画、重回帰分析・パス解析などの因果モデル、縦断データの分析
- 因果推論の条件:原因が結果より先に起こり(時間的先行)、二つの変数がともに変化し(共変性)、他の説明(第三変数)を排除できること。
- 例:メンタリング・プログラムへの参加が青少年の自尊感情を高めるかを、実験群と統制群の比較で確かめる調査
三類型の比較と選択
- 知識の水準:ほとんど知られていなければ探索的、現象は知られているが正確な規模が分からなければ記述的、原因についての理論があれば説明的調査が適しています。
- 設計の構造化の程度:探索的調査は柔軟で、記述的・説明的調査はあらかじめ定めた手続きと標準化された測定に従う量的研究が中心です。
- つながり:探索的調査で仮説を立て、記述的調査で実態を確かめ、説明的調査で原因を検証するという順序が典型的です。
教科書によっては、研究結果を政策やプログラムの改善に活かす評価調査を別の類型として加えることもあります。試験では事例を示してどの類型かを選ばせる問題がよく出ますが、研究の問いが「何が」「どれだけ」「なぜ」のどれにあたるかを見れば容易に区別できます。
参考文献
- Selltiz, C., Jahoda, M., Deutsch, M., & Cook, S. W. (1959). Research Methods in Social Relations (rev. ed.). New York: Holt, Rinehart and Winston.
- Neuman, W. L. (2014). Social Research Methods: Qualitative and Quantitative Approaches (7th ed.). Harlow: Pearson.
- Rubin, A., & Babbie, E. R. (2017). Research Methods for Social Work (9th ed.). Boston: Cengage Learning.
- Babbie, E. R. (2021). The Practice of Social Research (15th ed.). Boston: Cengage.