2000年の歴史
1世紀ローマの医学著述家ケルススは『医学論』で炎症の徴候を「発赤と腫脹、熱感と疼痛(rubor et tumor cum calore et dolore)」と記し、この言葉は今も医学教科書に引用されています。1858年、ドイツのルドルフ・ウィルヒョウは『細胞病理学』で5番目の徴候「機能障害」を加え、病気は細胞のレベルで起こるという見方を確立しました。1882年、ロシアのイリヤ・メチニコフはヒトデの幼生にとげを刺し、細胞が集まって異物をのみ込む様子から食作用を発見し、1908年にノーベル賞を受けました。炎症は単に有害なものではなく、体が自らを守る過程だという考えがここで定着しました。
| 徴候(ラテン語) | 意味 | 原因 |
|---|---|---|
| rubor | 発赤 | 血管拡張 |
| calor | 熱感 | 血流増加 |
| tumor | 腫脹 | 血管透過性の亢進 |
| dolor | 疼痛 | プロスタグランジン・ブラジキニン |
| functio laesa | 機能障害 | 組織損傷(ウィルヒョウが追加) |
炎症が起こる仕組み
細菌や傷を感知すると、組織のマクロファージや肥満細胞がヒスタミン、プロスタグランジン、サイトカインなどの信号物質を放出します。血管が広がって漏れやすくなり、血漿と白血球(主に好中球)が損傷部位に集まって病原体を排除し、組織の修復が始まります。近年の研究では、炎症は自然に消えるのではなく、リポキシンやレゾルビンなどが「終わらせるプログラム」を能動的に動かすことが分かってきました(サーハンら、2005年)。この反応は免疫系の第一の防衛線である自然免疫の中心です。全身で暴走すると敗血症のような緊急事態になります。
急性炎症と慢性炎症
急性炎症は数日で治まる健全な反応ですが、原因が取り除かれなかったり調節が崩れたりすると、低いレベルの炎症が何か月、何年も続く慢性炎症になります。慢性炎症は関節リウマチや炎症性腸疾患だけでなく、動脈硬化、2型糖尿病、一部のがん、認知症とも関連します。2017年のCANTOS試験は、コレステロールを変えずに炎症だけを抑える薬で心血管イベントが減ることを初めて示しました。加齢とともに炎症が高まる現象は「炎症性老化(インフラメイジング)」と呼ばれます。アスピリンやイブプロフェンは1971年にジョン・ベインが示したとおりプロスタグランジンの産生を抑え、ステロイドはコルチゾールに似た働きをします。禁煙、適度な運動、適正体重、十分な睡眠、野菜や魚中心の食事が慢性炎症の低下と関連するとされています。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- CRPが高いと必ず病気ですか?
- かぜ、けが、激しい運動の後にも一時的に上がることがあります。1回の値より、症状や再検査の結果とあわせて医師が判断します。
- 炎症に効く食べ物はありますか?
- 特定の食品一つで炎症が消えることはありません。ただ、野菜・果物・全粒穀物・魚・オリーブ油が多い地中海式の食事は炎症マーカーを下げるという研究が多くあります。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
- Celsus, A. C. (c. 30 AD). De Medicina, Book III. (Loeb Classical Library ed., Spencer, W. G., trans., 1935). Harvard University Press.
- Virchow, R. (1858). Die Cellularpathologie in ihrer Begründung auf physiologische und pathologische Gewebelehre. Berlin: Hirschwald.
- Metchnikoff, É. (1893). Lectures on the Comparative Pathology of Inflammation. London: Kegan Paul, Trench, Trübner.
- Vane, J. R. (1971). Inhibition of prostaglandin synthesis as a mechanism of action for aspirin-like drugs. Nature New Biology, 231(25), 232–235.
- Medzhitov, R. (2008). Origin and physiological roles of inflammation. Nature, 454(7203), 428–435.
- Serhan, C. N., & Savill, J. (2005). Resolution of inflammation: The beginning programs the end. Nature Immunology, 6(12), 1191–1197.
- Ridker, P. M., et al. (2017). Antiinflammatory therapy with canakinumab for atherosclerotic disease (CANTOS). New England Journal of Medicine, 377(12), 1119–1131.
- Furman, D., et al. (2019). Chronic inflammation in the etiology of disease across the life span. Nature Medicine, 25(12), 1822–1832.
- Franceschi, C., et al. (2000). Inflamm-aging: An evolutionary perspective on immunosenescence. Annals of the New York Academy of Sciences, 908, 244–254.
