背景
マイケル・ポーターは、1979年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』の論文と『競争の戦略』(1980)でこのモデルを示しました。これは、業界構造が企業の行動と成果を形づくるとする産業組織論の構造・行動・成果(SCP)の見方、特にベイン(1956)の参入障壁の研究を経営戦略に持ち込んだものです。中心的なメッセージは、競争は直接の競合相手の間だけでなく、顧客、供給業者、潜在的参入者、代替品を含むより広い場で起こるということです。
五つの力
- 既存企業間の競争:競合企業が多い、または規模が似ている、業界の成長が遅い、固定費と撤退障壁が高い、差別化が弱い場合に激しくなります。
- 新規参入の脅威:規模の経済、製品差別化とブランド、必要資本、流通チャネルへのアクセス、政府の政策などの参入障壁が低いほど大きくなります。
- 代替品の脅威:同じニーズを別の方法で満たす製品の価格対性能が良く、切り替えコストが低いほど大きくなります。
- 買い手の交渉力:買い手が集中している、または大量に購入する、製品が標準化されている、後方統合が可能な場合に強くなります。
- 売り手の交渉力:供給業者が少ない、代替となる投入物がない、切り替えコストが高い、前方統合が可能な場合に強くなります。
分析と活用
ポーター(2008)は、まず業界を定義し、次に各力の強さとその原因を評価して業界の収益性を説明し、最後に構造が今後どう変わりうるかを見ることを勧めています。分析結果は、力が最も弱い位置に企業を置く戦略や、力のバランスを作り変える戦略につながり、このモデルはポーターの基本戦略と組み合わせて使われます。実務では、SWOT分析の機会と脅威を整理する外部分析の道具としても広く使われています。
補完財と批判
ポーター(2008)は、政府と補完財を六番目の力ではなく、五つの力に影響する要因として扱いました。これに対してブランデンバーガーとネイルバフ(1996)は、補完的生産者を独立したプレーヤーとして含むバリューネットを提案しました。また、業界を静的に捉えている、業界の境界があいまいなプラットフォームやデジタル市場には適用しにくい、企業内部の資源の違いを説明しないといった批判もあります。
関連項目: アントレプレナーシップ(企業家精神)、シナリオ・プランニング、BCGマトリクス
参考文献
- Bain, J. S. (1956). Barriers to new competition. Cambridge, MA: Harvard University Press.
- Porter, M. E. (1979). How competitive forces shape strategy. Harvard Business Review, 57(2), 137-145.
- Porter, M. E. (1980). Competitive strategy: Techniques for analyzing industries and competitors. New York: Free Press.
- Brandenburger, A. M., & Nalebuff, B. J. (1996). Co-opetition. New York: Currency Doubleday.
- Porter, M. E. (2008). The five competitive forces that shape strategy. Harvard Business Review, 86(1), 78-93.