概要
ジャック・ロスマンは、1968年の全米社会福祉会議で発表し、1969年に『Social Work Practice 1968』に収録された論文「コミュニティ・オーガニゼーション実践の三つのモデル」で、多様な地域活動を三つの理念型に整理しました。この類型は地域福祉論で最も広く使われる枠組みとなり、地域福祉実践の過程のどの段階を重視するかもモデルによって異なります。
三つのモデル
- 小地域開発モデル(locality development):多くの住民が参加し、自助と協力によって問題を解決し、地域の力を育てることを目標とします。プロセス目標を重視し、合意とコミュニケーションが主な戦略です。セツルメントや地域開発事業が原型です。
- 社会計画モデル(social planning):非行、住宅、保健など具体的な社会問題を、専門家がデータ収集・分析と合理的計画によって解決します。タスク目標を重視し、住民参加の程度は状況によって異なります。ニーズ評価とプログラム計画が中心的な道具です。
- ソーシャルアクションモデル(social action):不利な立場にある集団を組織し、より大きな地域社会に資源の配分や処遇の改善を要求し、権力構造や制度を変えようとします。抗議、交渉、キャンペーンなど対立・対決の戦術を用い、公民権運動や福祉権運動がその例です。
モデルの比較
- 目標:小地域開発は自助と統合(プロセス)、社会計画は実質的な問題解決(タスク)、ソーシャルアクションは権力関係と制度の変革(両方)を重視します。
- 権力構造の見方:それぞれ協力者、雇用主・後援者、変えるべき外部の標的(抑圧者)とみなします。
- 住民の見方:それぞれ市民、サービスの消費者、制度の犠牲者とみなします。
- 実践者の役割:イネイブラー・調整者・教育者、専門家・事実収集者・分析者・プログラム実施者、アドボケイト・活動家・仲介者・交渉者です。
モデルの混合と改訂
ロスマンは『コミュニティ介入の戦略』第5版(1995)で、実際の現場では三つのモデルが混ざり合い、時期によって移り変わることを強調しました。2007年の論文では名称を計画・政策、コミュニティ能力開発、社会的アドボカシーに改め、三つの軸を交差させて純粋型3つと複合型6つ、計9つの介入様式を示しました。合理的な計画と住民参加型の問題解決は対立するものではなく、結びつけることで効果が高まるというのが彼の結論です。
活用と限界
三つのモデルは、事例分析で「この事業はどのモデルに近いか」を判断する枠組みとしてよく使われます。たとえば住民によるまちづくり事業は小地域開発、自治体の福祉計画策定は社会計画、住民の権利運動はソーシャルアクションに近いといえます。ただし理念型であるため現実の混合的な実践を単純化しているという批判があり、住民の社会関係資本やストレングスをどう育てるかは他の理論で補う必要があります。
参考文献
- Rothman, J. (1969). Three models of community organization practice. In Social Work Practice 1968 (pp. 16–47). New York: Columbia University Press.
- Rothman, J. (1995). Approaches to community intervention. In J. Rothman, J. L. Erlich, & J. E. Tropman (Eds.), Strategies of Community Intervention (5th ed., pp. 26–63). Itasca, IL: F. E. Peacock.
- Rothman, J. (2007). Multi modes of intervention at the macro level. Journal of Community Practice, 15(4), 11–40.