海藻の灰から見つかった紫の元素
1811年、フランスのベルナール・クールトアは火薬の原料の硝石をつくるため海藻の灰を酸で処理していて、紫色の気体が立ちのぼるのを見つけ、この発見は1813年に発表されました。ジョゼフ・ゲイ=リュサックはこれが新しい元素であることを明らかにし、ギリシャ語の「紫」にちなむ名をつけました。昔から東西で、首がはれる甲状腺腫を海藻や海綿を焼いた灰で治療することがあり、1820年、スイスの医師ジャン=フランソワ・コワンデはヨウ素がその有効成分だとして甲状腺腫の治療に使いました。1915年、エドワード・ケンダルは甲状腺からヨウ素を含むホルモン、チロキシンを結晶として取り出しました。
ヨウ素欠乏とヨウ素添加塩
甲状腺ホルモン(T4、T3)にはヨウ素原子が4つまたは3つ含まれているため、ヨウ素が足りないとホルモンをつくれず、甲状腺機能低下症や甲状腺腫が起こります。とくに妊娠中の重い欠乏は赤ちゃんの脳の発達に一生残る障害を与えることがあり、ヨウ素欠乏は予防できる知的障害の重要な原因とされてきました。1917〜20年、デービッド・マリーンとオリバー・キンボールはアメリカ・オハイオ州の女子生徒にヨウ素を与えて甲状腺腫を予防できることを示し、1924年にはアメリカでヨウ素添加塩の販売が始まりました。1990年代からWHOとユニセフが「ユニバーサル塩ヨード化」を進め、欠乏国は大きく減りましたが、いまも欠乏が残る地域があります。
どれだけとればよいか、そして放射性ヨウ素
WHOは成人に1日150 μg、妊娠中・授乳中の女性に250 μgを推奨しています。昆布やわかめ、のりなどの海藻をよく食べる日本や韓国では、欠乏よりもとりすぎのほうが多いとする研究があり、ヨウ素が多すぎるとかえって甲状腺機能の異常や甲状腺機能亢進症の悪化と関係することがあります。とくに昆布だしや昆布の加工品を毎日大量にとる習慣には注意が必要とされます。ただし、ふつうの食事の海藻をむやみに避ける必要はないというのが一般的な見方で、甲状腺の病気がある人は医師と摂取量を相談しましょう。1941〜46年、ソール・ハーツは放射性ヨウ素で甲状腺機能亢進症を治療する道をひらき、いまも放射性ヨウ素は亢進症や一部の甲状腺がんの治療に使われています。原子力事故の際に配られるヨウ化カリウムの錠剤は、放射性ヨウ素が甲状腺にたまるのを防ぐ薬で、行政の指示があったときだけ飲むものです。ヨウ素のサプリメントを自己判断で大量にとることはすすめられません。この記事は一般的な情報であり、診断や治療の代わりにはなりません。
この記事は一般的な健康情報であり、診断や治療に代わるものではありません。症状が続く場合は医師に相談してください。
よくある質問
- 甲状腺結節があると海藻を食べてはいけない?
- 多くの甲状腺結節や機能の異常では、ふつうの量の海藻を完全にやめる必要はありません。ただし放射性ヨウ素治療の前など、ヨウ素制限食が必要な場合もあるので主治医の指示に従ってください。
- うがい薬や消毒薬にもヨウ素が入っている?
- はい、ポビドンヨードはヨウ素を使った消毒薬・うがい薬です。長期間・大量に使うと吸収されることがあるので、妊娠中や甲状腺の病気がある人はとくに注意しましょう。
出典確認日:2026-10-26
参考文献
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