概要
障害を何とみなすかによって、障害者福祉の政策と実践の方向は大きく変わります。20世紀半ばまでは障害を個人の欠陥とみなす医学モデル(個人モデル)が支配的でしたが、1970年代のイギリスの障害者運動から、障害を社会がつくり出した問題とみなす社会モデルが生まれました。今日では両者を統合したWHOの国際生活機能分類(ICF)と、人権を中心に据えた国連障害者権利条約が国際的な基準になっています。
医学(個人)モデル
- 視点:障害は病気・事故・先天的異常によって生じた個人の身体的・精神的な機能障害であり、個人が被る悲劇とみなされます。
- 解決策:医師やリハビリ専門職が診断し、治療・リハビリ・補装具によって機能障害を軽減するか、個人が社会に適応できるようにします。サービスの資格も医学的判定と等級で決まります。
- 貢献と限界:医療とリハビリの発展に貢献しましたが、障害者を受け身の患者にし、施設収容と分離を正当化したと批判されます。社会環境の責任が見えなくなります。
社会モデル
- 起源:イギリスの「隔離に反対する身体障害者連盟」(UPIAS)は1976年の『障害の基本原則』で、インペアメント(身体機能の制約)とディスアビリティ(インペアメントのある人を社会活動から排除する社会的不利)を区別しました。
- 確立:社会学者マイケル・オリバーが「社会モデル」と名付け、『障害の政治』(1990)で、障害は資本主義産業社会の生産様式と制度のなかでつくられたと理論化しました。
- 例:車いす利用者が建物に入れないのは脚のせいではなく、階段しかなくスロープがないからです。点字・手話・やさしい言葉の情報がないこと、雇用差別や偏見も障害をつくる障壁です。
- 解決策:アクセシビリティの保障、差別禁止、合理的配慮、自立生活の支援、障害当事者の参加と自己決定です。この視点は障害者差別禁止法、自立生活運動、インクルーシブ教育の理論的根拠となり、ソーシャルワークではエンパワメント・モデルとつながります。
ICFと障害者権利条約
- ICF:WHOは2001年に国際生活機能分類(ICF)を採択し、障害を健康状態と心身機能・身体構造、活動、参加が個人因子・環境因子と相互作用した結果ととらえました。医学モデルと社会モデルを統合した生物心理社会モデルと呼ばれます。
- 障害者権利条約:2006年に国連で採択され2008年に発効した条約は、障害を機能障害のある人と態度・環境上の障壁との相互作用から生じるものと定め、社会モデルと人権の視点を反映しました。韓国は2008年に批准しました。
- 韓国の変化:医学的基準による1〜6級の障害等級制が2019年7月に廃止されて「障害の程度が重い/重くない障害者」に簡素化され、サービス支援総合調査によって個人のニーズと環境をあわせて見る方向に変わりました。
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批判と論点
- 社会モデルへの批判:トム・シェイクスピアらは、インペアメントとディスアビリティを厳格に分けすぎると、痛み、疲労、慢性疾患のように機能障害そのものから来る困難を無視することになると指摘しました。障壁をすべて取り除いても残る制約があるということです。
- 医学モデルの再評価:治療やリハビリそのものが問題なのではなく、医療専門職が障害者の生活全体を決める権力構造が問題だとする見方が多くあります。
- 実践への示唆:今日のソーシャルワーカーには、個人の機能制約を正確にアセスメントしながら、環境の障壁もあわせて変えていく二重の焦点が求められます。
参考文献
- Union of the Physically Impaired Against Segregation (UPIAS). (1976). Fundamental Principles of Disability. London: UPIAS.
- Oliver, M. (1990). The Politics of Disablement. Basingstoke: Macmillan.
- World Health Organization. (2001). International Classification of Functioning, Disability and Health (ICF). Geneva: WHO.
- Shakespeare, T. (2006). Disability Rights and Wrongs. London: Routledge.
- United Nations. (2006). Convention on the Rights of Persons with Disabilities. New York: United Nations.